多剤耐性セラチアSerratia marcescens

 

はじめに

グラム陰性通性嫌気性桿菌で、セラチアによる感染症の90%以上はSerratia marcescensによる。

空気中や塵埃、水中などの自然界に広く存在する。

食物に付着して増殖することがある。

糞便や口腔などからしばしば分離される常在菌でもある。

本来病原性は弱く、健常者ではセラチアが皮膚に付着したり口から入っても腸炎や肺炎、敗血症などの感染症を生じることはない。

セラチアの問題点

多剤耐性菌が多いため日和見感染の原因菌となりやすい。

エンドトキシンを産生するためエンドトキシンショックを生じやすい。

特に湿潤環境に定着しやすく、病院環境に一旦定着・蔓延すると長期間生息し消滅させることが難しい。

消毒薬に馴化し抵抗性を示しやすい。

メタロβ-ラクタマーゼ産生株が分離されている。

病院内での感染経路

1.   接触感染(尿、喀痰、膿、便、浸出液などで汚染された手指や医療器具)

2.   咳による飛沫感染

3.   汚染水の使用(生理食塩液、消毒薬など)

4.   注射製剤や血液製剤の汚染

セラチアが血液などに侵入する原因・経路

1.    内因性感染:癌の末期や極度の免疫不全状態などでは、腸管内に常在していたセラチアが血液中に侵入し、菌血症や敗血症を引き起こす

2.    感染症に伴う菌血症や敗血症

3.    外因性感染症:セラチアにより汚染された注射剤や輸液ルートが原因で、血液中に菌が人為的に侵入

通常のセラチアと多剤耐性セラチア

健常者の糞便などから分離される「通常のセラチア」は、ペニシリンやセファロスポリン系抗生物質には耐性を示すが、第三世代セファロスポリン系抗菌薬やオキサセフェム系やセファマイシン系、カルバペネム系に対しては良好な感受性を示す。

多剤耐性セラチアはこれらのβ-ラクタム薬に広範な耐性を示すのみならず、アミカシンなどのアミノ配糖体系抗菌薬や、フルオロキノロン系抗菌薬にも耐性を示すものがあり、それらの動向が警戒されている。

拡散と感染の防止

1.    標準予防策の正しい実施

2.    吸痰、陰部清拭、尿路カテーテル処置などに際しては接触感染予防策を徹底する。

3.    接触感染予防策の解除は、菌陰性化を2回確認してから行う。

4.    湿潤な環境の衛生管理

5.    保菌者に対しては抗菌薬による除菌は行わない

6.    輸液の調製は使用直前に行う。

7.    複数の患者の血液や髄液などの本来無菌的な臨床材料から同時期にセラチアが分離された場合には共通の感染源が存在する可能性があり調査する。

8.    喀痰や尿などからのセラチア分離数が急に増加した場合には、セラチアによる院内環境汚染の可能性がある。

9.    血液などの無菌的であるべき臨床材料からセラチアが分離された場合には、外因性感染症の可能性がある。

10. 多剤耐性セラチアが分離された場合には、感染・保菌患者の個別(個室)管理もしくはコホーティングを行う。