尿路カテーテル関連感染防止対策

 

はじめに

尿路感染は最も頻繁にみられる病院感染のひとつであり、米国の急性期治療病院で報告される病院感染の40%をしめるとされている。院内で発生する尿路感染症の80%以上はカテーテルの留置によって発生するとされ、カテーテル留置が尿路感染症の最も大きなリスクとなっている。また、留置期間が長いほど尿路感染のリスクは高くなる。尿道カテーテルの適正使用・管理が最も重要な尿路感染症対策である。ここでは尿道留置カテーテル関連感染Catheter-associated Urinary Tract InfectionCAUTI防止対策に関して述べる。

尿道留置カテーテル関連感染の起炎菌の由来

@      内因性(患者自身の腸内細菌叢や外陰部や皮膚)

A      外因性(他の患者や医療従事者からの交差感染、採尿バッグから排液する際の汚染など)

尿道留置カテーテル関連感染症の起炎菌

@      短期間の留置では大腸菌などの腸内細菌が多い。

A      長期間(1ヶ月以上)の留置では緑膿菌やセラチア、黄色ブドウ球菌など抗菌薬耐性菌がふえてくる。また、複数菌感染が増加する。

尿道留置カテーテルにより微生物が膀胱内に侵入する経路

カテーテルの外側を通る経路

@ カテーテル挿入時に尿道から膀胱内に微生物が押し込まれる。

A 会陰部や直腸に定着している微生物がカテーテルと尿道の間隙を通って侵入する。

カテーテルの内側を通る経路

@ カテーテルと採尿バッグの接続部の閉鎖が破られて微生物が侵入する。

A 採尿バッグの排液口から微生物が侵入し、バッグ内の尿が汚染されカテーテル内に侵入する。

B バイオフィルムの形成

開放式ドレナージシステムを用いた場合、カテーテル留置4日後にはほぼ100%細菌尿がみられる。閉鎖式ドレナージシステムを用いた場合は感染のリスクは著しく低下するが、それでも留置後710日で約2550%で細菌尿がみられ、30日以上の留置ではほぼ100%で細菌尿がみられる。

一般にCAUTIは無症状に経過し、症状があってもカテーテルの抜去とともに改善することが多いが、男性では精巣上体炎や前立腺炎を併発して発熱の原因となることがある。また、リスクの高い患者では腎盂腎炎を併発し敗血症に至ることがある。

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尿道留置カテーテルの取り扱い

 原則

·               必要時にのみ留置し、医療従事者の便宜のために使用しない。

·               間欠導尿での細菌尿のリスクは尿道留置カテーテルの50%以下との報告があり、CAUTIに比べると治療が容易なことが多い。

·               無菌的挿入と維持に関する知識と技術を持った医療従事者が取り扱う。

·               取り扱う医療従事者は留置に伴う合併症に関する教育を定期的に受ける。

·               カテーテルを留置された患者は、無症候性であっても感染性病原体のリザーバーとなっている可能性があることを認識する。

·               特に長期留置患者では多剤耐性菌感染が少なくないことを認識する。

·               カテーテル留置後は可能な限り早期に抜去する。

·               細菌尿の出現率は1日あたり310%ずつ増加していく。

 挿入

·               カテーテルに関わる操作をする場合には手袋を着用しその前後で手指衛生を行う。

·               多剤耐性菌感染の場合には接触予防策を実施する。

·               挿入時には清潔器具を用いて無菌的に操作する。

·               挿入前に入浴、シャワー浴、もしくは石けんを用いて陰部を洗浄した方が良い。

·               挿入時には滅菌済みの単回使い切りの粘滑剤を使用する方が良い。

·               挿入後はカテーテルを適切に固定する。

·               通常は女性では下腹部もしくは大腿内側に、男性では下腹部か大腿最上部に固定する。

·               尿道の損傷を最小限にするために、尿流出が確保できる範囲で最小径のカテーテルを用いる方が良い(通常はFr. 14Fr. 16)。

·               閉鎖式ドレナージシステムを使用する。

 カテーテルの交換

·               カテーテルとともに採尿バッグも交換する。

·               閉塞したカテーテルは速やかに交換する。

·               定期的にあるいは頻回に交換することで尿路感染症を予防することはできない。

·               ただし長期に留置されている場合は、月1回程度の定期的交換を予定しておく。

 

ドレナージシステムの取り扱い

·               閉鎖式ドレナージシステムの接続部ははずさない。

·               カテーテルと採尿システムは屈曲しないようにする。

·               採尿バッグは定期的に空にする。一杯になってから捨てることは良くない。

·               812時間を目安に採尿パック内の尿を廃棄する。

·               尿の回収時にはバッグの排液口を回収容器に接触させない。

·               尿の回収容器は患者毎に使用し、異なる患者間での使いまわしはしない。また、1回毎に洗浄する。

·               採尿バッグは常に膀胱より低い位置に置く。

·               採尿バッグを直接床に接触させない。

·               少量の新鮮な尿を検体として採取する時には、採尿バッグのサンプリングポートを消毒した後に採取する。

·               大量の尿を検体として採取する時には、採尿バッグの排液口から採取する方が良い。

外尿道口の衛生管理

·               外尿道口周囲を清潔に保つには入浴、シャワー浴、もしくは石けんによる陰部洗浄でよい。

·               消毒薬や局所抗菌薬による処置は通常不要である。

膀胱洗浄

·               治療上必要な場合以外は膀胱洗浄は行わない。

·               膀胱洗浄の必要がある時は持続洗浄とするか、もしくは無菌操作で洗浄する。

·               抗菌薬や消毒薬を用いた膀胱洗浄は、日常的な感染予防策としては行わない。

抗菌薬

·               抗菌薬の感染予防効果は一時的なものにすぎない。長期の使用は耐性菌感染のリスクを高めるので行わない。

·               特殊な場合を除き、カテーテル留置に伴う無症候性細菌尿に対しては抗菌薬投与は行わない。

·               尿路感染症に対して抗菌薬を使用する際にはカテーテルを交換した方が良い。