6 Oct, 2010
膵癌の予後不良に関係するMUC17の発現が、エピジェネティックな発現制御を受けていることが明らかとなった
このたび、当研究室の北本祥 (Sho Kitamoto)らは、国立療養所星塚敬愛園およびネブラスカ大学の研究グループとの共同研究で、近年、膵臓がんの予後不良因子として報告されているMUC17の発現がエピジェネティックな発現制御を受けていることを明らかにした。
ムチン(Mucin)分子の生理活性に関しては、消化器や呼吸器などの上皮細胞上に発現し、外部刺激から上皮細胞を保護することで生体の恒常性の維持に貢献していると考えられている。しかし一方で、近年、癌化に伴いムチンファミリー(MUC family)が各々異常な発現様式を示すことが明らかとなり、癌の増殖や浸潤転移といった癌化過程の様々な局面においてムチンが機能的役割を持つことが示され、癌の新たな診断・治療の標的として注目されはじめている(Kufe DW, Nat Rev Cancer 2009)。最近では、新たにMUC17(正常な膵組織では非発現)が膵癌になると高率に発現すること(Moniaux N. et al, J Biol Chem. 2006)、そして転移性の膵癌ではさらにMUC17発現が亢進しており、独立した予後不良因子であることが報告されている(Hirono S. et al, Cancer Sci. 2010)。
このような背景のなか、本研究では、7番染色体上に位置するMUC17遺伝子の発現機構をエピジェネティックな観点から解析を進め、MUC17が1)プロモーターの転写開始点近傍のCpG-DNAのメチル化状態と2)同領域に存在するヒストンH3の9番目のリジン残基における化学修飾による制御を受けていることを明らかにした。さらに、近年、癌の進展におけるその機能が注目されている3)マイクロRNA(miRNA)に関してもMUC17の転写後制御に関わっている可能性を見いだした。
膵臓がんは癌の中でも極めて悪性度が高く、PET-CT等の最新の機器を用いても、いまだに早期発見どころか、治癒を望める段階での診断は不可能であることが多く、それゆえ、手遅れになる可能性の高い最も難治性の癌である。このような現状を打破するために、現在、膵胆管系腫瘍の「早期診断法の確立」あるいは「悪性度を規定する分子標的の同定」が望まれている。本研究で同定されたDNAメチル化制御機構は、臨床検体においてもMUC17の発現を反映している可能性があるため、今後、PCRを基盤とした高感度なメチル化検出法を用いて、膵癌おける悪性度診断のバイオマーカーとしての有用性に関して解析を進める必要がある。
Original Article
Kitamoto S, Yamada N, Yokoyama S, Houjou I, Higashi M, Goto M, Batra SK, Yonezawa S. DNA methylation and histone H3-K9 modifications contribute to MUC17 expression. Glycobiology. 21(2):247-56, 2011. PMID: 20926598.
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