鹿児島大学院 医歯学総合研究科 先進治療学専攻

腫瘍学講座 人体がん病理学 (旧第二病理)

Research Highlights


23 May, 2010

プロモーターのDNAメチル化状態が、種々の癌において予後不良に関係するMUC3の発現を制御している


 このたび、当研究室の北本祥 (Sho Kitamoto)らは、近年、様々な癌において予後不良因子として報告されているMUC3Aの発現がCpG-DNAのメチル化修飾により制御されていることを見いだした。


 近年、癌化に伴いムチンファミリー(MUC family)が各々異常な発現様式を示すことが明らかとなり、癌の増殖や浸潤転移といった癌化過程の様々な局面においてムチンが機能的役割を持つことが示されている。既に、一部のムチンに関しては乳癌や肺癌等で診断に利用されており、治療に関しても、これら乳癌や肺がんを標的とした臨床試験が、第三相試験にまで進み「ムチンを標的とする診断・治療」の有効性が明らかになりつつある。一方で、これまでMUC3Aに関しては、胃癌・大腸癌・膵癌・腎癌・乳癌・肺癌などの癌進展に伴い異常な発現様式を示し、予後因子にもなりうることが報告されているが、その発現及び機能制御機構については、未だ十分な解析がなされておらず、今後の臨床応用を考える上で解決すべき課題となっていた。


 このような背景のなか、本研究では、MUC3A遺伝子プロモーター上流のCpG-DNAメチル化状態がMUC3Aの転写活性に与える影響を調べるため、質量分析による DNAメチル化定量解析法(MassARRAY法)を用いて網羅的なメチル化の定量を行った。その結果、MUC3Aのプロモーター転写開始点近傍( -345/-75 bp)のCpG-DNAのメチル化修飾の状態が、MUC3の転写活性レベルを反映することを見い出した。さらに、1)メチル化阻害剤を用いることでMUC3Aの発現量が回復することや2)本研究において同定されたプロモーター領域が、以前報告されているMUC3Aを制御しうる因子(Cdx-2、GATA、HNF-1など)の結合領域とほぼ一致していることからも、プロモーターのメチル化修飾がMUC3Aの発現の転写活性を規定する因子として重要な役割を果たしていることが明らかとなった。さらに、まだ詳細は不明だがヒストン脱アセチル化阻害剤を用いることでも、mRNA発現が上昇することから、直接ないし間接的にヒストン修飾の変化がMUC3A発現の制御に関与することも明らかとなった。今後は、MUC3Aの癌での機能的意義の解明や各種癌の悪性度診断のバイオマーカーとしての有用性の評価に関して解析を進める必要がある。



Regular Article
Kitamoto S, Yamada N, Yokoyama S, Houjou I, Higashi M, Yonezawa S. Promoter hypomethylation contributes to the expression of MUC3A in cancer cells. Biochem Biophys Res Commun. 397(2):333-9. 2010. PMID: 20510874.

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