鹿児島大学難治ウイルス病態制御研究センター センター長 池田 正徳

鹿児島大学 難治ウイルス病態制御 研究センターセンター長
池田 正徳

難治ウイルス病態制御研究センターは平成29年4月より大学院医歯学総合研究科附属施設から全学施設になりましたのでご挨拶させて頂きます。

センターは、成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)を中心とし、慢性に経過するウイルス感染症の病態の解明と治療法の研究を目的として、平成5年度に医学部附属施設として設置されました。「ヒトレトロウイルス研究分野」、「臓器がんウイルス研究分野」、「分子病理・遺伝子疫学研究分野」の3研究分野体制でのスタートとなりました。

平成15年度より大学院医歯学総合研究科附属施設となり、この改組により、3つの研究分野がそれぞれ「抗ウイルス化学療法研究分野」、「分子ウイルス感染研究分野」、「分子病理病態研究分野」に改称するとともに「感染宿主応答研究分野」(その後、「血液・免疫疾患研究分野」に改称)が新たに加わり現在の4つの研究分野体制になりました。平成29年度からは、全学施設へと移行し、桜ヶ丘キャンパスの大学院医歯学総合研究科、鹿児島大学病院のみならず、鹿児島大学の関連研究分野との連携を強化できる全学的研究体制が整いました。

HTLV-1のキャリアは我が国では100万人以上と推定されており、南九州や沖縄に集中しています。なかでも、鹿児島県には約20万人の感染者が存在し、鹿児島大学が総力をあげて取り組むべき重要な課題となっています。HTLV-1の感染が原因で起こる成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は一旦発症すると致死的な造血器腫瘍ですが有効な治療法は開発されていません。また、鹿児島大学で発見・命名されたHTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)は進行性の中枢神経疾患で、患者のQOLを著しく低下させます。センターには、ATLやHAM/TSPの患者から得られた貴重な臨床検体が多数保管されていますので、これらのリソースを活用して国内外の研究施設との共同研究を推進し、新規治療法の開発を目指します。

難治ウイルス病態制御研究センターでは平成25年度から、センターの4分野と理工学研究科の3分野による医・理工連携により、医学領域、理工学領域単独ではなし得ない共同研究を展開しております。理工学領域が有する、天然物ライブラリー、IgG結合ペプチド、糖鎖ナノテクノロジー等を医学領域が有するHTLV-1感染細胞、ATL細胞、臨床検体、動物モデルを用いて検討することで、新規の診断法・治療法の開発を目指しています。さらに、平成27年度からは、ABSL3(動物実験が可能なバイオセーフティレベル3)施設やユニークな動物モデルであるツパイを保有する、共同獣医学部附属越境性動物疾病制御研究センターとの連携体制も確立して、成果を毎年「鹿児島大学感染症制御のためのシンポジウム」で発表しています。

また、センターではHTLV-1以外にも肝炎ウイルス(HCV、HBV)やHIV-1などの慢性化する難治ウイルスの研究にも取り組んでいます。C型慢性肝炎に対しては近年、飲み薬だけでウイルスを排除できる強力な治療法が開発されていますが、その一方で、ウイルス排除後の肝発癌や、HBVの再活性化などの新たな課題が現れました。C型慢性肝炎患者のHCV感染期間は、現在すでに25年以上となっているため、ウイルス排除後も肝癌発生のリスクが残り、肝発癌予防の研究がますます重要になっています。HIV-1感染でも抗ウイルス剤の開発によりウイルスの増殖を抑制し、エイズの発症を予防できるようになりましたが、HIV-1感染者は一生薬を飲み続けなければなりません。HIV-1を完全に排除できる治療法開発の研究が求められております。

現在、センターでは医学領域以外にも理工学、農獣医学領域等のバックグラウンドを持った修士・博士課程の学生を広く受け入れて、若手研究者の育成に取り組んでおります。

以上ご紹介させて頂きましたセンターの分野の垣根を越えた自由な議論や得意技術を持ち寄る特徴を活かして、これまでにない新しい国際レベルの研究を推進し、難治性のウイルス疾患を撲滅するミッションに取り組んでまいりたいと思います。

 

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難治ウイルス病態制御研究センター
センター長 池田 正徳

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