β-ラクタマーゼ産生菌

ESBL産生菌

メタロβ-ラクタマーゼ産生菌

 

β-ラクタマーゼ

β-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、モノバクタム系)の母核構造中のβ-ラクタム環を分解する細菌酵素。現在200以上のβ-ラクタマーゼが知られている。

Amblerの分類

Class A:ペニシリナーゼ。プラスミド性。

基本的にはセファロスポリン系は分解できない(基質特異性が狭い)。

β-ラクタマーゼ阻害薬による阻害を受ける。

Class B:メタロβ-ラクタマーゼ。プラスミド性。

カルバペネム系を含むほとんど全てのβ-ラクタム薬を分解する。

β-ラクタマーゼ阻害薬を分解する。

Class C:セファロスポリナーゼ。本来は染色体性であり菌種に特異的。

通常セファマイシン系は分解できない。

β-ラクタマーゼ阻害薬の影響を受けにくい。

Class D:オキサシリン系を分解する。プラスミド性。

Extended-spectrum β-lactamases (ESBLs)産生菌

1.基質(特異性)拡張型β-ラクタマーゼ(Extended-spectrum β-lactamaseESBL)

Class A β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)であるにもかかわらず、第三世代セフェム系抗菌薬を分解する(分解する基質が拡張)。

セファマイシン系やオキサセフェム系は分解しない。カルバペネム系は分解しない。

β-ラクタマーゼ阻害薬による阻害を受ける。

Class D β-ラクタマーゼに属するESBLもある。

2ESBLs産生菌種

ESBL遺伝子はR-プラスミドによって菌種をこえて伝播しうる。

Class C β-ラクタマーゼをコードする遺伝子が染色体上に存在する菌種はESBLの検出が困難である。そのためClinical Laboratory and Standards InstituteCLSI)はそれらの菌種をESBL検出対象菌種から除外している。すなわちCLSIESBLの検出対象としているのは、肺炎桿菌、大腸菌、Klebsiella oxytocaProteus mirabilis4菌種である。

肺炎桿菌、大腸菌、Klebsiella oxytocaProteus mirabilis以外にも、エンテロバクター、サイトロバクター、セラチア、緑膿菌などからESBLが検出されている。

3.感染対策

ESBLs産生菌に汚染された場合、腸管内に保菌し、院内感染における集団発生の原因となりやすい。

ESBLs産生菌の伝播様式は基本的には手指または医療器具による接触経路であるので、接触予防策を実施することが重要である。吸痰、陰部清拭、尿路カテーテル処置などでは接触予防策を徹底する

可能なかぎり個室隔離が望ましいが、24人部屋では、手指衛生はもちろん、器具の専用化・予防具の着用、よく触れる部位のアルコール消毒・清拭を行う。

接触予防策の解除は、検出部位(血液培養や再採取困難な部位からの検出例は便)からの菌陰性化を一週間以上の間隔をあけ2回以上確認してから行う。

ESBLs 産生株であっても薬剤感受性以外の基本的な性状は非産生株と同様と考えてよいので、それぞれの菌種の特徴を考慮した対策を加える。

同一の第三世代セフェム薬の長期使用は避ける。

4ESBLs産生菌感染症の治療薬

第三世代セフェム薬であるセフォタキシム(クラフォラン)、セフタジジム(モダシン)などに耐性を示すが、セファマイシン系(セフメタゾール、商品名はセフメタゾン)も感受性を示す。菌血症ではカルバペネム系薬が必要である。

多くのESBLs産生菌は、β-ラクタマーゼ阻害薬であるクラブラン酸やスルバクタム によって阻害される。スルバクタム/セフォペラゾン(スルペラゾン)やタゾバクタム/ピペラシリン(ゾシン)も効果が期待される。ただし、β-ラクタマーゼ阻害薬が無効のものも報告されている。

セファマイシン系やカルバペネム系に過度に頼ることなく、あくまでも感受性試験結果を参考に、広域β-ラクタム薬以外の抗菌薬も選択肢に入れ、適正な化学療法を実施すべきである。

5ESBLの検出と連絡体制

ESBLs産生の疑いがある株が検出された場合、検査室ではESBL診断用検査で確認する。ESBLと判定されたら、Thinkに表示しICTスタッフに通知する。

 

メタロβ-ラクタマーゼ産生菌

1メタロβ-ラクタマーゼ

カルバペネム系を含むほとんど全てのβ-ラクタム薬に耐性を示すため最も危険なβ-ラクタマーゼと考えられている。カルバペネム系抗菌薬の使用が多い本邦では欧米に比べメタロβ-ラクタマーゼ産生菌の分離が多い。

2.メタロβ-ラクタマーゼ産生菌種

緑膿菌、セラチア、肺炎桿菌、大腸菌、Proteus vulgaris、シトロバクター、エンテロバクターなどから検出されている。

3.感染対策

伝播様式は基本的には手指または医療器具による接触経路であるので、接触予防策を実施することが重要である。吸痰、陰部清拭、尿路カテーテル処置などでは接触予防策を徹底す

さらに、メタロβ-ラクタマーゼ産生株であっても薬剤感受性以外の基本的な性状は非産生株と同様と考えてよいので、それぞれの菌種の特徴を考慮した対策を加える。

   カルバペネム系抗菌薬を濫用しない。

接触予防策の解除は、検出部位(血液培養や再採取困難な部位からの検出例は便)からの検体による、菌陰性化または検出菌に対するイミペネム・メロペネムの薬剤感受性がSと判定されていること3回以上確認してから行う。

4.メタロβ-ラクタマーゼ産生菌感染症の治療薬

モノバクタム系に感受性を示す株が報告されているが、個々の抗菌薬感受性試験結果を参考に抗菌薬を選択するべきである。

5.メタロβ-ラクタマーゼの検出と連絡体制

メタロβ-ラクタマーゼ産生の疑いがある株が検出された場合、検査室ではメタロβ-ラクタマーゼ診断用検査にて確認する。メタロβ-ラクタマーゼと判定された次第、Thinkに表示しICTスタッフに通知する。また判明次第、主治医は病棟医長、病棟師長、感染制御部門と相談の上、患者を個室隔離する。