CVカテーテル関連血流感染 

CRBSI Catheter-related bloodstream infection

中心静脈(CV)カテーテルに関連した血流感染対策

基本原則

病原体

診断

血液培養

治療

挿入時の注意点

刺入部皮膚管理

高カロリー輸液

使用器具

輸液ラインの管理

薬剤混合法

 

CVカテーテル等挿入時のへパリン生食調剤

 

 

 

基本原則

不必要なCVカテーテル留置は決して行わない。

経過中CVカテーテル留置の必要性を繰り返し評価し、不要ならすみやかに抜去する。

主な病原体

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌が代表的)、黄色ブドウ球菌、カンジダ

(この3菌種で7080%を占める)

診断

1)      発熱や全身状態の変化など、感染を疑う所見がある。

2)      血液培養からCR-BSIの起炎菌として考えられる病原体が検出され、肺炎、尿路感染、術後の創部感染など、カテーテル感染以外の感染巣を除外できる。

3)      血液培養が陰性であっても他の感染巣がなく、カテーテル抜去で熱が解熱する、またはカテーテル先端培養で(一定量以上の)菌を検出する。

血液培養の方法と留意点

発熱等の感染症を疑う所見を認め、CRBSIの可能性を否定できない場合

1)      末梢静脈から1セットおよびCVカテーテルから1セット(好気性・嫌気性のボトル各1本、計4本)、乳幼児は小児用ボトルを計2本の血液培養を提出。

2)      可能な限り最適量の血液(8-10 ml、乳幼児は1-3 ml)を採取する。

3)      培養ボトルに血液を入れる前にアルコール綿でボトルの蓋を拭く。

4)      血液培養で菌が検出されれば、カテーテルを抜去してカテーテル先端を培養に提出する。

5)      CRBSIが疑われ抜去する場合は最初から「カテーテル培養」を同時に行う。CR-BSIが疑われない場合はカテーテル先端を培養に提出する必要はない)

6)      血液培養の結果を待たずとも、CVカテーテルが不要と判断された場合は、すぐに抜去して培養に提出し、末梢静脈カテーテルへの変更を行う。

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【ピットホール】

1)      動脈血が静脈血よりも菌の検出率が優れているというデータはない。

2)      CVカテーテルのみからの血液採取は菌が検出されたとしても血流感染を起こしているかの判断が難しいため、原則として行わない。

3)      培養ボトルの注射針穿刺部位は必ずしも無菌ではない。

CRBSIの治療

1)      カテ抜去+全身的抗菌薬投与」が基本

2)      標準的な抗菌薬の投与期間の目安

@         コアアグラーゼ陰性ブドウ球菌:カテーテルを抜去し57日間(第一選択薬 VCM)、カテーテル温存の場合には10-14日間の抗菌薬療法(+抗菌薬ロック療法)

A         黄色ブドウ球菌:カテーテル抜去し14日間以上の抗菌薬療法(第一選択薬 MSSA→CEZMRSA→VCMまたはTEIC

B         カンジダ属:カテーテルを抜去し血液培養陰性化より2週間の抗菌化学療法(第一選択薬 FLCZまたはMCFG

C         グラム陰性桿菌およびその他の菌:カテーテルを抜去し714日間の抗真菌薬療法

3)      黄色ブドウ球菌菌血症の場合は心内膜炎・腸腰筋膿瘍・骨髄炎、カンジダ血症の場合は眼内炎の合併症に留意し、これらの感染巣が見出された場合は抗菌薬投与の延長を考慮する。 

4)      カンジダ血症の場合は必ず眼科を受診する。

5)      中心静脈カテーテル挿入に伴う予防的抗菌薬投与は推奨されない。

カテーテル挿入時の注意点

1)      施行前の手洗いは必須である。

 術者および介助者は処置前に目に見える汚れがなければ擦式消毒用アルコール製剤を用いて手指消毒を行う。目に見える汚れがある場合は、先に流水と石けんで手を洗う。

2)      マキシマル・バリア・プレコーション

滅菌手袋、長袖の滅菌ガウン、マスク、帽子と大きな清潔覆布(ドレープ)(100×120cm)を用いる。本院においてはこれらがセットとして供給されている。標準的バリアプレコーション(滅菌手袋と小さな覆布)のみで行うべきではない。

3)      部位の選択 

感染率は鎖骨下静脈<内頸静脈<大腿静脈の順であるが、気胸などの重大な合併症防止の面からは内頚静脈穿刺が望ましい。大腿静脈の使用は基本的に避け、何らかの理由により他の部位が選択できない場合に限定する。

4)      刺入部の消毒

@     1%クロルヘキシジンアルコール(ヘキザックAL1%)を使用する。2002年に発表された血管内カテーテル挿入部位の皮膚消毒に使用されている消毒薬に関するメタアナリシスで、クロルヘキシジンはポビドンヨードと比較してCR-BSIのリスクを51%減少させると報告されている(Chaiyakunapruk N et al. Ann Intern Med. 2002; 136: 792-801)。

A     クロルヘキシジンが禁忌である場合は、10%ポピドンヨード製剤(スワブスティック ポピドンヨードまたは10%イソジン液)または消毒用エタノールを使用する。生後2カ月未満の乳児でのクロルヘキシジンの安全性および有効性は確立されていない。

B     消毒薬は刺入部から外へと円を描くように塗布する。10%ポピドンヨードを使用するときは消毒効果を得るために十分に乾燥させる(2分間待つ)。消毒範囲は広めにすることを心がける。

C     挿入前に挿入部位を清拭もしくは石鹸などで洗浄する。穿刺に先立って局所の剃毛はしない。除毛が必要であれば、医療用電気バリカンなどを用いる。

D     ポピドンヨードで消毒後、ハイポアルコールを用いると消毒効果が失われるので行ってはならない。

5) 挿入時の環境整備

可能な限り手術室や処置室等の隔離された環境が望ましい。やむをえずベッドサイドで行う場合は、術者・介助者の処置がしやすいようにできるだけ清潔な空間を確保する。緊急時におけるカテーテル挿入等無菌操作の遵守が確実でない場合、48時間以内に可能な限り早期にカテーテルを交換する。

カテーテル挿入中の刺入部皮膚管理

1)      消毒は1%クロルヘキシジンアルコール(ヘキザックAL1%を使用する。クロルヘキシジンが禁忌である場合は、10%ポピドンヨード製剤(スワブスティック ポピドンヨードまたは10%イソジン液)または消毒用エタノールを使用する。抗生物質含有軟膏・ポビドンヨードゲル(商品名 イソジンゲル)は用いない。 

2)      ドレッシングは滅菌されたガーゼ型ドレッシングまたはフィルム型ドレッシングを使用する。

3)      ドレッシング交換の頻度はガーゼ型の場合は週に2日毎、フィルム型の場合は最低7日毎に交換する。

高カロリー輸液を行う際の原則

1)      栄養管理が必要な場合には、可能な限り経腸栄養を使用する。

2)      高カロリー輸液製剤への薬剤の混合は、可能な限り薬剤部で無菌環境下に行う。 

3)      高カロリー輸液を投与するにあたっては、混合する薬剤の数量を最小化し、回路の接続などの作業工程数を最小化する。 

4)      高カロリー輸液製剤は、混合後24時間以内に投与を終了する。調整後の製剤は室温では保存しない。保存する場合には必ず冷蔵庫を用いる。

使用器具について

1)      カテーテルの内腔数は必要最小限となるようにする。

2)      3カ月以上の長期留置が予想される場合には、長期用 (Broviac catheterHickmann catheter) を使用すべきで、より長期間の留置が予想される場合には皮下埋め込み式カテーテルの使用を考慮する。

3)      PICC (peripherally inserted central venous catheter) は肘静脈から中心静脈へと挿入するカテーテルで、挿入時の合併症が少ないことが利点とされている。感染率に関しても通常の中心静脈カテーテルに比し上昇させないとされる。適応例では使用を考慮する。挿入に際しては、マキシマル・バリア・プレコーションが必要である。

輸液ラインの管理

1)      輸液ラインを扱う前に擦式アルコール消毒剤による手指消毒を行う。

2)      輸液ラインを交換する際は、交換直前に組み立てる。可能であれば一体化型の輸液ラインを用いる。

3)      インラインフィルターを使用する。

4)      中心静脈ラインを血液製剤や薬剤投与など、多目的に使用することは極力避ける。

5)      三方活栓は手術室やICU以外では中心静脈の輸液ラインには組み込まない。

6)      輸液ラインとカテーテルの接続には消毒用エタノールを用いる。消毒用エタノールによる厳重な消毒操作の後、接続する。

7)      三方活栓から測注する場合は消毒用エタノールによる厳重な消毒を行う。

8)      輸液ラインの交換は曜日を決めて週2回定期的に交換する(閉鎖式輸液ラインは週1回で可)。

9)      脂肪乳剤の投与に使用した輸液ラインは、使用後すみやかに交換する。 

10)   ヘパリンロックは避ける方がよい。 

11)   定期的にカテーテルを入れ替える必要はない。

12)   カテーテルが不要と判断された場合は直ちに抜去する。 

13)   ルート類、コード類は可能な限り床を這わせない。

薬剤混合法(ミキシング)

1)      中心静脈からの輸液剤は薬剤部の管理の元にクリーンベンチ内で無菌的に調剤するのが基本である。

2)      病棟で混合操作をするときは、点滴準備台をアルコールで清拭消毒し、手指衛生の後、マスク・非滅菌手袋を着用して行う。

3)      注射針、針装着部には触れない。触れた場合は交換する。

4)      注射剤のゴム栓穿刺部には触れない。触れた場合はアルコールで消毒する。

5)      混合場所は、独立した部屋で汚染区域と交差しない場所に設置するのが望ましいが、困難な場合は病棟内で清潔な器具や清潔操作を行う専用スペースを決め、使用後の器材や汚染した医療従事者と交差しないように配置する。

6)      ミキシングに使用した手袋を、継続して点滴ライン交換などベッドサイドで使用しない。

CVカテーテル等挿入時のへパリン生食調剤について

 血管内カテーテル等挿入の際に使用されるへパリン生食は、下記のいずれかの方法により、無菌的に調剤する。

1)        滅菌されたプレフィルドシリンジ(へパリンNaロック100シリンジなど)を利用する。

2)        小児や出血傾向などへパリン投与量が問題となる場合は、清潔野でシリンジを用いて調剤する、または術野外で調剤した後清潔シリンジに吸引する等、清潔野に展開されていても落下細菌で汚染されないように管理する。

3)        カテーテル検査等でへパリン生食を多量に使用する場合は、可能な限り閉鎖ラインシステムを用いたシリンジによる注入を行う。閉鎖ラインシステムが使用できない場合は、手術部で使用している容器全体を滅菌した500ml生理食塩水プラスティックボトルを利用する。