鹿児島大学病院血液膠原病内科,難治ウイルス病態制御研究センター感染宿主応答研究分野

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研修医募集

難治性疾患診療のすすめ

 我々の研究室には,難治ウイルス病態制御研究センター血液・免疫疾患研究分野という正式の名前がありますが,研究の臨床応用の場として,鹿児島大学病院で血液・膠原病内科の診療を担当しています.その概要をご紹介します.
 血液内科の診療では,造血器悪性腫瘍が診療の中心ですが,各種の貧血・骨髄異形成症候群・血小板減少性紫斑病・血友病を初めとする凝固異常症など,すべての血液疾患の診療を行っています.最近は,腫瘍内科医として化学療法感受性の固形腫瘍の化学療法(自己末梢血幹細胞移植を含む)も増加しています.我々が最も得意とする分野は次の通りです.

(1)成人T細胞白血病(ATL)の発見の当初から30年以上の歴史を重ね,世界一の症例数・臨床経験を誇るATLの診療.
 健康保菌者(キャリア)の発症予防から外来通院治療・多剤併用化学療法・骨髄移植・ミニ移植さらには新規開発治験薬の臨床試験に至るまで,ATLに関しては現在行えるすべての治療が可能な体制を整えています.2006年8月から,CCR4を標的とした新規の抗体療法の第I相試験・第II相試験を行い,その後初発例における化学療法との併用試験も行いました.現在は下記のJCOGの臨床試験として,ATLに対する同種移植の有効性を確認するための臨床試験を行っているところです.さらに,化学療法に抵抗性のATL急性型・リンパ腫型にはヒ素を併用した化学療法の臨床試験を行っています.2012年春からは,慢性型・くすぶり型ATLに対する,インターフェロン+AZTによる臨床試験が始まる予定です.

(2)悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・ATLの治療は,厚生労働省のがん研究助成金指定研究研究班に参加しJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の一員として,また急性白血病はJALSG(日本成人白血病研究グループ)の一員として,いずれも最先端の治療および新しいエビデンスを得るための治療研究を行っています.

(3)造血器腫瘍以外の化学療法感受性固形癌の治療においても,積極的に自己末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を取り入れています.症例は増加の一途をたどり,昨年度からは月1例の割合で病棟をフル回転させてPBSCH・PBSCTを行っています.

(4)日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会のがん治療認定医・がん薬物療法専門医・暫定教育医・暫定指導医として,がん化学療法(抗がん剤治療)の専門家の立場から,入院での化学療法のみならず,外来化学療法を積極的に取り入れ,毎日多数の外来患者さんの化学療法を行っています.他施設の外来化学療法室に比し,当院の外来化学療法室では血液内科の患者さんの割合が非常に多くなっています.

(5)HTLV-Iキャリアの発症予防の研究(文部科学省科学研究費補助金 特定領域研究ATL発症高危険群の長期追跡と発症予防の検討 研究班班員.研究班の一般向けのホームページは,http://htlv1.org/ です.) を継続中です.なお,一般のキャリアの方の相談・検診などにも随時応じています.

 血液内科の守備範囲は,近年,従来の枠を大きく越えて広がっており,化学療法耐性難治性固形癌に対する免疫療法としてのミニ移植や,骨髄に存在する体性幹細胞を用いた再生医療,あるいは遺伝子導入のターゲットとして骨髄の造血幹細胞を用いた遺伝子治療など枚挙に暇がありません.治療薬の面でも,最近の分子標的療法の隆盛の端緒を開いたimatinibをはじめ,抗体療法の代表であるrituximab,多発性骨髄腫の治療薬としてのサリドマイド・proteasome阻害薬のbortezomib,アドリアマイシン依頼のインパクトを持って迎えられている新規抗がん剤bendamustineなどが次々と導入され,今後も導入予定の新規薬剤が目白押しです.

 腫瘍内科の診療は,化学療法感受性の固形癌の化学療法が中心ですが,がん対策基本法が施行されたことに伴い,当院の地域がん診療拠点病院・日本臨床腫瘍学会認定研修施設としての役割がますます大きくなってきています.

 膠原病内科の診療は,関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病・強皮症・シェーグレン症候群・血管炎症候群はもちろん,線維筋痛症や慢性疲労症候群など膠原病類縁の病気を網羅して幅広く担当しています.関節リウマチに対する抗体療法や分子標的療法などの新規治療薬も積極的に使用しています.

 血液内科,腫瘍内科,膠原病内科,いずれも単独の臓器を診るのではなく全身を診る内科です.また,この3つの領域の患者さんは多種多様な感染症を合併します.そのため日常の臨床は感染症内科としての側面もありますが,これも全身を診る内科です.このように,我々の診療科では全身を診る研修が知らず知らずのうちに出来るというのも大きな特徴です.従って,各種学会の認定医・専門医のうちおもなものを挙げると,内科学会認定内科医(卒後4年目)・内科専門医(卒後7年目)・血液内科専門医(卒後7年目)・リウマチ学会専門医(卒後7年目)・臨床腫瘍学会専門医(卒後8年目)が取得可能です.もちろんこの間の国内有名施設での臨床研修も積極的に勧めています.そしてこれらの臨床は,研究(基礎研究でなく臨床研究に重点をおいています)との両立が大事です.我々が理想とする研究とは,「基礎研究者になるための」研究ではなく「よい臨床医になるための」研究です.我々の診療科の取り扱う疾患は,いずれも専門性の高い難治性疾患であり,これらに対して造血幹細胞移植・免疫抑制療法・抗サイトカイン療法・分子標的療法等の先駆的高度先進医療を精力的に遂行し,治療成績を向上させなければなりません.そのためには,常に最先端の学問に接し,自ら新しい治療を開発しようという強い意志が必要です.研究はその意志を養ってくれる貴重な経験になるでしょう.

 血液学は,内科の中でもっとも基礎医学に密着したユニークな領域で,特徴の一つに「基礎」と「臨床」の垣根が低いことがあげられます.また,血液あるいは骨髄が容易に手に入り,顕微鏡で直接癌細胞の「顔」を自らの目で見て診断する事が出来る一方で,遺伝子レベルでも容易に病態を研究できるという大きな特徴があります.不治の病の代表であった急性白血病も治癒可能になりましたが,まだまだ難治であることに変わりはなく,血液専門医には治癒をもたらす可能性をとことん追求する大きな使命があり,またそれだけやりがいもある仕事です.
 以上のような領域とテーマで,臨床に基本をおいた研究を国際的なレベルで展開し,血液内科・腫瘍内科・膠原病内科としてさらなる発展を目指します.またResearch Mindにあふれ,かつプライマリーケアにも秀でた,血液専門医・腫瘍内科専門医・膠原病専門医の養成に邁進します.我々の診療科はまだまだできたてですが,自由な雰囲気にあふれた21世紀型の診療科であると自負しています.血液学・腫瘍学・リウマチ膠原病学に興味を持つ若い皆さんの参加を熱烈に歓迎します.

血液・膠原病内科 准教授 魚住 公治

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