ディプローマ・ポリシーと教育到達目標

教育到達目標(習得すべきコンピテンシー)構築の経緯

2009年(平成21年)、教育のミッション(リンク)構築ののちに、ミッションを達成するために卒業生が有しているべき能力を教育到達目標として作成し、医学科会議(医学科教授による会議)で承認されました。
教育到達目標は、医学科カリキュラムを新しくするために組織された医学科カリキュラム検討部会において、国内外の医学教育の動向とコンピテンシー、鹿児島大学の特色である地域医療で必要とされる能力を検討し、具体的で測定可能な行動・能力として記述しています。特に重要視したのは、

  1. 知識(認知)に関する項目では、応用できる学際的知識とともに、情報の収集や選択する能力も含めた
  2. 実践的なレベルでコミュニケーションやチーム医療に関する項目を設定した
  3. 離島・へき地を含む地域医療を含む医師の役割を理解するだけではなく、役割の自覚や行動も求めた
  4. 鹿児島で特に重要な地域、文化における疾患と医療の多様性の理解を含めた
  5. 研究マインドを具体的な能力として記述した

等です。これらにより、鹿児島大学医学部医学科の特色を教育の成果として示すことが可能になり、また、アウトカム基盤型教育の欠点として指摘されている「最低限の能力育成となる」ことを防ぎ、教育の改善、向上の指針となることを目指しました。
目標に掲げた能力が卒業時に必ず修得していなければならないことを説明した「医学科教育変更の主旨」(リンク)と、ミッション、教育到達目標とを合わせて医学科会議で承認することにより、アウトカム基盤型教育の推進と「卒業時に期待されるアウトカム」として教育到達目標が位置付けられ、現在のカリキュラム構築の基礎となっています。
のちに、医学科教育のディプローマ・ポリシーの明示が求められた際に、教育到達目標をディプローマ・ポリシーとすることとしました。

教育到達目標

  1. 知識
    医学、医療、それに関連する自然科学、人文・社会科学、経済学の知識を修得して、実践に応用することができる(以下の能力を示すことによって、この能力を修得しているとする)
    1. 知識を実践に応用することができる
    2. 学問大系、専門領域を超えて、幅広い知識を医学、医療、社会の発展に活用することができる
    3. 必要とする最新の情報を収集し、適切に選択して利用することができる
  2. 診療の実践
    基本的臨床能力を有し、患者中心のチーム医療を熱意と責任をもって安全に実践できる
    1. 常に利他的な態度を示し、心理社会背景を含む患者の抱える問題を包括的に理解して支援し、患者を尊重した医療の推進ができる
    2. 基本的診療手技とコミュニケーション技能を身につけ、患者及びその家族の声をよく聞き、良好な対人関係を築いて診療を行うことができる
      i.患者から情報収集を行い、データを解釈して頻度の高い疾患の診断を行い、診療方針を計画することができる
      ii.基本的検査・治療手技を実施することができる
      iii.診療録の記載と症例提示を実施し、医療情報を適切に取り扱うことができる
      iv.インフォームドコンセントに基づく患者自らによる意思決定の支援と患者教育を行うことができる
    3. 医療チームのメンバーと互いを尊重したコミュニケーションを図り、チームの機能を高めるためにリーダー及びメンバーとしての自分の役割を果たして、安全な医療を実践できる
    4. 医療の実践に必要な知識や技能を修得することが医師としての責務であることを理解し、実行できる
  3. 地域社会
    高い倫理観と社会性に基づいて、地域及び国際社会における自分の役割を認識することができる
    1. 地域医療に参加し、基本的な初期診療を実施できる
    2. 離島・へき地を含む地域医療、先端医療、保健・福祉制度のそれぞれの機能と連携を理解し、医師の果たす役割を自覚し、行動できる
    3. 医療資源の適切な分配をふまえた倫理的な最善の医療の選択ができる
    4. 個人、家族、地域、文化圏、国際社会における疾患・医療・社会・人の多様性を理解し、最新の情報に基づく適切な対応ができる
  4. 研究発展
    基礎・臨床・社会医学における研究を体験し、研究の重要性と必要性を認識する
    1. 課題を発見して、論理的、批判的に考え、探求し、問題解決する自己主導型学習を行うことができる
    2. 研究の計画と実施、結果の解析とまとめ、発表、倫理的対応を理解する
鹿児島大学
鹿児島大学医学部
鹿児島大学病院
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