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最新手術機器の導入
鹿児島大学では常に最新手術機器や技術を駆使して手術効果と安全性を高めています。
とくに2009年は一気に新鋭機器を導入しました。 以下に主なものを紹介します。
1.術中MRI 2.ナビゲーション
3.電気生理モニタリング 4.5-ALAを用いた悪性組織の術中蛍光観察
5.術中ICG蛍光血管撮影 6.ファイバートラッキングと皮質下刺激を用いた錐体路温存下
7.覚醒下腫瘍摘出術 8.ビデオスコープ


1.術中MRI
手術室に設置されたMRIで、国内で5台目になります。2009年10月から稼働しました。
腫瘍摘出操作がある程度進んだ段階で、まだ腫瘍が残っているか、残った腫瘍の近くに重要な中枢がないかどうかチェックし、腫瘍摘出の根治率と安全性を高めます。
イメージガイド手術室のコンセプト
(右側がMRI)
ナビゲーション下マイクロサージャリー
(奥にMRIが見える)
MRI装置内に患者を搬入
術中MRIを撮影中
手術前のMRI 術中MRI:腫瘍摘出腔の後方に薄く残存腫瘍が認められるので(赤矢印)、再度の摘出を行った。


2.ナビゲーション
2000年から導入されていますが、新たに2009年10月から最新鋭のナビゲーターを2機導入しました。手術ナビゲーションは車のナビゲーション(GPS)と同じ原理で、赤外線を使用して手術操作部位が脳のどの部分におよんでいるのかをリアルタイムに描出します。このため、安全な手術が可能になります。
ナビゲーション画面上に錐体路を表示し、手術の際に、これを傷つけないように操作する。


3.電気生理モニタリング
手術中に細い電極(プローブ)で手術野を電気刺激して、顔面神経、聴神経、舌咽神経、迷走神経などの走行を確認します。鹿児島大学脳神経外科では、聴神経腫瘍手術後の顔面神経麻痺は起こらなくなりました。また、脳幹部腫瘍の手術後でも恒久的な嚥下障害は起こらなくなりました。
誘発筋電図、誘発脳波モニター装置 喉頭筋の反応をみるための特殊な気管内チューブ
脳幹を細い電極で電気刺激 迷走神経の刺激による左喉頭筋の収縮が認められる


4.5-ALAを用いた悪性組織の術中蛍光観察
手術によってどれだけ腫瘍を除去出来たかは、悪性脳腫瘍患者の生存期間に最も大きな影響を与える要因であることが知られています。しかし悪性脳腫瘍は脳から発生するため、実際の手術の際、肉眼的に脳との区別がつきにくいことが多く、そのために上に述べた術中MRIやナビゲーションを利用していますが、それでも残った腫瘍が少量であれば、見極めが難しいことが多いです。
5-ALAは動植物の生体内に含まれる天然アミノ酸の一つですが、腫瘍細胞内ではプロトポルフィリンに変換されます。脳腫瘍の患者さんに手術の前に5-ALAを内服していただくと数時間で体内に吸収されます。手術の際に患部に波長405nmの半導体レーザー光を照射して観察すると、腫瘍細胞はプロトポルフィリンによる赤色蛍光を発します。これによって正常組織と腫瘍組織を顕微鏡を通して区別することが可能になりました。
悪性脳腫瘍に対する主な摘出操作後に実施した5-ALA蛍光検査。赤い部分が腫瘍細胞が残っている部分(プロトポルフィリンの蛍光)。
この後、再度摘出操作を加えて、赤い部分を切除した。


5.術中ICG蛍光血管撮影
インドシアニングリーン(ICG)は肝機能の検査に用いられる安全な試薬ですが、手術中にICGを静脈内投与し、特殊なフィルターを用いて観察すれば、血液が流れている部分だけを観察出来ます。これを利用して脳動脈瘤の手術の際、クリッピングが完全であるかどうか、他の血管を閉塞していないかなどのチェックをすることが出来ます。脳動静脈奇形や脳血管吻合術にも応用しています。
脳動静脈奇形の術中写真
(白濁した脳軟膜で被われて全貌を観察できない)
脳動静脈奇形のICG蛍光血管撮影像
(血管の走行の全経路が良くわかる)
左中大脳動脈瘤 左中大脳動脈瘤のクリッピング後
(2本のクリップを使用)
ICG蛍光血管撮影で、完全なクリップが行われていることを確認した。動脈瘤は造影されず、脳動脈は順調に流れている。


6.ファイバートラッキングと皮質下刺激を用いた錐体路温存下脳腫瘍摘出術
錐体路(すいたいろ)は手足の運動をコントロールする重要な神経経路です。この経路を守るために、通常のMRIでは見えない錐体路をDTI(ファイバートラッキング)という方法で、描出することが出来ます。この三次元立体画像をナビゲーションに乗せることによって、手術操作部位のどの方向、どの深さに錐体路があるかがわかります。 さらに手術中、脳の白質内を実際には見えない錐体路の位置を、双極電極によって電気刺激し、手足の筋肉に挿入した電極からの反応を検出することによって、推定することが出来ます。こうして、錐体路を障害することなく腫瘍の摘出を進めることが出来ます。
錐体路(手足を動かす神経の経路)の描出。腫瘍(オレンジ色)のすぐ内側を右の錐体路が走行していることがわかる(グリーンのライン)
ある程度腫瘍摘出が進行した段階で術中MRIを撮影し、現段階で錐体路がどこにあるのかをナビゲーション画面上に表示し、引き続いて残った腫瘍の摘出を進める。


7.覚醒下腫瘍摘出術
脳腫瘍が、言語や手足の中枢の近くに存在する場合、手術前のMRI検査などでその存在部位を予測して手術しますが、最も確実な方法は、手術中に脳表を電気刺激して、その反応を見ることです。そのために開頭操作が終わった後に麻酔を覚まして、患者さんと会話しながら、脳表の電気刺激を行います。これによってより安全な脳腫瘍の摘出が可能になります。痛みの神経は脳にはありませんので、患者さんが痛みを感じることはありません。
患者さんと話しながら、脳表を電気刺激し、言語野を避けて腫瘍を摘出する
言語野にあった腫瘍も(左)もほぼ摘出された


8.ビデオスコープ
従来から鹿児島大学脳神経外科では脳外科手術に内視鏡を導入し、患者さんの負担の少ない小さな開頭で、最大の効果を追求してきました。
従来の内視鏡は手術野の映像を数万本の光ファイバーで伝搬し、CCDカメラで捉える方法です。一方ビデオスコープは柔軟なスコープの先端に超小型CCDカメラが搭載されており、光ファイバーによる影響をうけることがないため、従来の内視鏡より鮮明に脳深部の映像を捉えることが可能になりました。
ビデオスコープの導入によって今後さらに、患者さんに負担の少ない脳内視鏡手術が発展すると考えられます。
内視鏡手術
ビデオスコープによる第三脳室底穿孔手術
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