原田病
四十二歳の男性です。

昨年春、急性肺炎で入院したことがあります。退院後も咳や痰が出て仕事を休むこともありましたが、なんとか良くなってきた感じでした。

十一月はじめに喘息の症状が出ました。 治療してもらって1か月くらいで良くなりました。
ところが、十二月にはいって軽い頭痛があり風邪かと思いましたが、翌日から割れるように頭が痛く、右眼の白目が赤くなり、歪みを感じました。
まもなく左眼も同じようにぼんやり暗く見えるようになりました。

「急性ぶどう膜炎」といわれ治療を続けています。視力が回復するかどうか心配です。

ぶどう膜炎とはどんな病気ですか?

ぶどう膜という言葉ですが、眼の中の虹彩・毛様体・脈絡膜のことをまとめたものです。
虹彩と毛様体は茶目のことで、脈絡膜は眼底にあって網膜の栄養を補給する組織です。メラニン色素を含んでいて葡萄のように見えるので「ぶどう膜」といっております。

ぶどう膜には血管がたくさんありますので炎症反応をおこしやすいのです。
ぶどう膜炎という病気は急激に起ったり、いつとはなしに起ったりとさまざまです。
あまり多い病気ではありませんが、もともとぶどう膜炎になりやすい体質であったり身体の変調を来たしたりした場合に起ります。

原因となる疾患でよく見られるものを挙げると、原田病、ベーチェット病、サルコイドーシス、リウマチなどがあります。
最近では高齢者で免疫のはたらきが弱ったり、大きな手術を受けたあとにぶどう膜炎がおこることがあります。また、 HTLV−I が関係することもあり原因はさまざまです。したがって、ぶどう膜炎の場合には眼だけでなく身体じゅうをよく調べて原因を探して治療することが大切ですが、半数くらいは原因が見当たらなくて目だけに症状が出るのです。


相談者の場合はどのような病気が考えられますか?

症状や経過からすると「原田病」が最も考えられます。
風邪ぎみの症状にはじまって、強い頭痛と両目のかすみということですから典型的な原田病とみなしてよいでしょう。

原田病は急性ぶどう膜炎の原因としてよく見られるもので、ぶどう膜だけでなく髓膜、皮膚などメラニン色素を豊富な部分が同時に炎症を起こす疾患です。
急性期には眼の炎症に加えて髄膜炎症状がありますが、これは長引くことなくきれいに治ります。炎症がおさまると皮膚の色素が部分的に薄くなったり髪の毛が白くなることがあります。昨年春には肺炎や喘息の症状があったとのことですが、原田病と言うぶどう膜炎と直接の関係はないと思います。


治療と今後の見通しはどうでしょうか?

原田病はすばやく診断して治療をはじめることが大切で、 きちんと治療すれば多くの場合2か月くらいで良くなります。
治療の方法として、副腎皮質ステロイド薬(ステロイド)をかなり大量に使います。

文面からして、このような標準的な治療が行われきているのだと思います。経過ですが、3週間くらいで炎症がすっかりとれてしまうこともあれば、数か月にもわたって続くこともありさまざまです。
相談者の場合は、発病してから1か月ほどのようですから徐々に炎症がおさまっていく段階にあるのではないでしょうか。

視力がどの程度まで回復するかは、これも一概に言えません。完全にもとに戻ることももちろんありますが、多少の視力低下が残ることがあります。
急性期には眼の中の炎症はたいへん強いので、ある程度の視力低下はやむを得ないことだと思ってください。しかし、日常生活に困難になるほどに視力が低下することはめったにありません。


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