中心性網膜炎
38歳の男性です。

春先から仕事が夜遅くまで忙しく、目が疲れることが度々でした。
ところが、2週間ばかり前から右目の中心がぼけて見えるようになりました。 左目をかくして右目だけで見ると、見ようとするところの真ん中が卵を横にしたような範囲で暗く見えるのです。 また、物が小さく、赤や黄色はくすんで見えます。

このような経験ははじめてのことで、目の中にどんな病気が起こったのか、これからどうなるのかがとても心配です。特別な治療法はあるのでしょうか?

どんな病名ですか?

症状とその起こり方から中心性網膜炎に違いないと思います。
この病気は割にありふれたもので、文字どおり網膜の中心部分のごく狭い範囲に支障が起こるものです。


中心性網膜炎とはどんな病気ですか?

物を見るためには眼底に張っている網膜に映像が写ることが出発です。
網膜の中心部は最も大切な部分で視細胞が密集しておりますが、 ここにはさまざまな病気が起こりやすいのです。

中心性網膜炎は、中心性漿液性網脈絡膜症という難しい名前でも呼ばれるように、 網膜の中心部に円形あるいは卵形に水が溜まるのです。卵形に暗くみえたり、物が小さく見えたり、色が黒ずんで見えたりするのは、中心部分の視細胞がいわば水浸しになっために映像がシャープに写らないためなのです。
中心部以外の網膜は支障がないので、それ以外の部分の見え方はふだんとまったく変わりがないはずです。


なぜこのような病気が起こるのですか?

網膜の視細胞の外側には色素上皮細胞という細胞が並んでいて余計な水や有害な物が視細胞に来ないようにしているのです。
ところが、0.1ミリにも満たないような小さな穴ができると水が漏れてくるわけで、これが中心性網膜炎なのです。

古くからある病気ですが原因はよくわかっていません。
この病気は30代から40代の働き盛りの人に、いつになく多忙であったり、精神的な緊張が続いたあとに起こるのです。


この病気の見通しと治療法を教えてください。

中心性網膜炎は恐ろしい病気ではなくて自然に治る性質のよい病気です。
夜遅くまで仕事に熱中したりしないで、ゆったりした気分を続けることが大切です。 そうすれば、1か月から2か月のうちに症状が軽くなってきて、元の見え方に回復するはずです。

しかし、数か月以上も長く続くと視力が十分に回復しないだけでなく、物が歪んでみえたりやっかいになることが少なくないのです。

積極的な治療法として、レーザー光線で水漏れを起こしている部分を固めてしまう方法があります。この治療法は安全で有効ですが、あくまでも自然に治るのを期待するのが一番です。


相談者へのアドバイスを

中心性網膜炎は簡単な検査で間違いなく診断することができます。

まずは、リラックスしてください。安静といっても家でぶらぶらというのではありません。
1か月から2か月まで様子をみてください。たぶん良くなると思いますが、少しも治りそうな気配がない時にはレーザー治療を考えるのがよいでしょう。


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