網膜色素変性症
長男の嫁(26歳)の夜盲症について。

来春、長男との結婚が決まっている女性が夜盲症なのですが、直接本人にも息子にも この病気について聞いたことはないので、細かい症状などはわかりません。
ただ、もしも遺伝する病気であったら心配だと思い、ペンをとりました。 彼女は現在会社で事務職に就いており、夜間、車の運転もしているようです。
今のところは、日常生活には何ら支障をきたすことはないようです。

夜盲症は、治療すれば治る病気なのか、今以上に病状が進行することはあるのか、 また予防法や遺伝についてご教示ください。

夜盲症とは?

明るい所ではよく見えるのに、薄暗い所で見えにくいのを夜盲症といいます。

具体的な訴えは様々ですが、例えば、野球をやっていて夕方になるとボールが見にくくなる、雨天や曇天の日には水たまりに足をとられやすい、映画館に入ると席を探すのに苦労する、光の弱い星が見えない、といった症状です。

外界の像が結ぶ眼底の網膜には、明るい所で細かな物を見分けたり色を感じる錐体視細胞と、暗い所でごくわずかな光でも感じる杆体視細胞という、役割の異なる2種類の視細胞がぎっしりつまっています。
杆体視細胞がうまく働かなくなると、夜盲症になるのです。

さて、夜盲症は網膜のさまざまな故障で起こるのですが、代表的なのは網膜色素変性症です。 お尋ねの夜盲症が網膜のどんな病気によるのかはっきりしませんが、原因として最も多い網膜色素変性とはどういうものか説明してみましょう。

網膜色素変性は遺伝病です。
さまざまなタイプがありますが、最も多いのは常染色体劣性という遺伝の仕方で、両親は何ともなくて、兄弟に2人以上患者がでることがあるのが特徴です。
いとこ結婚のような近親同士の結婚の場合にはこの病気がでやすくなりますが、最近では親をはじめ親族に誰も同じ病気の人がいない、という場合が少なくありません。
この場合、子供に同じ病気が出るかどうかは、結婚相手が近親者ではなく、しかも両方の家族に他には夜盲症がいなければほとんど心配しなくてもよいと思います。

この他に、常染色体優性遺伝であったり伴性遺伝であったりのことがままありますが、親のどちらか、あるいは親族の誰かに同じ病気の人がいるのが普通で、子供に症状がでるかどうかは詳しく検査してみなければわかりません。

この病気のはじめの症状は夜盲症ですが、進行すると明るい所でも見にくくなることがあります。
しかし、症状の進行具合は患者さんごとに実にさまざまです。20代半ばで、昼間は何ともなく、しかも夜間も車の運転ができるとすれば、夜盲症はごく軽いのだろうと思います。このような場合には進行するとしてもごくゆっくりであって、日常生活にひどく不自由を感じたり、ましてや失明に近いほどひどくなる、ということは今後の長い将来にわたって問題にならないでしょう。

網膜色素変性症という病気は、残念ながら有効な治療法のないのが現状です。対症療法として網膜の血管を広げて栄養を良くしようとする薬物を使いますが、どれほど効果があるのかわかりません。ただし、真夏の強い日差しを浴びたり、過度の照明の環境で過ごしたり、といったことのないように気をつけることが大切です。

以上は、網膜色素変性症という一番多い病気を想定した場合です。
夜盲症の中には、軽い夜盲が続くだけでまったく進行しない、といった場合も少なくないのです。

まず、どんな病気が原因で夜盲症があるのか、正しい病名を知ることが大切です。両方の家族に夜盲症の人がいないかどうかも調べてみることです。近くの眼科医に相談されたらいかがでしょうか?さまざまな質問に答えてくれるでしょうし、必要があれば大学病院などを紹介してもらえるでしょう。


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