学位論文の要旨

2010年 西川 拓朗

Nishikawa T, Okamoto Y, Kodama Y, Tanabe T, Shinkoda Y, Kawano Y. Serum derivative of reactive oxygen metabolites (d-ROMs) in pediatric hemato-oncological patients with neutropenic fever. Pediatr Blood Cancer 2010;55:91-94

血液腫瘍患者における好中球減少性発熱(NF)の重症度を早期に予測する手段は確立されていない。活性酸素種(ROS)は、好中球の微生物に対する殺菌作用や好中球細胞外トラップ形成において必須とされる。そこで我々は、患児らの血清Derivative-Reactive Oxygen Metabolitesd-ROMs)値とBiological Antioxidant PotentialBAP)値を測定し、NFの重症度との関係を検討した。27名の血液腫瘍患児が本研究に登録し、平均年齢は10歳(1-19歳)であった。CRPd-ROMsBAP値をNF発症時に測定した。Wismerll社のFree Radical Analytical System 4®を用いd-ROMs値とBAP値は測定した。計36回のNFを評価でき、Systemic Inflammatory response syndromeSIRS)合併NF群(n=7)のd-ROMs値は、SIRS非合併NF群(n=29)に比して著しく低下をしていた(197.6 vs. 314.1 U.CARR, p=0.017)。一方、NF発症時のCRP値、BAP値、WBC数、好中球数に関してはSIRS合併NF群とSIRS非合併NF群の2群間に有意な差は認められなかった。NF経過中の最大CRP値は、SIRS合併NF群が著しくSIRS非合併NF群に比して、有意に上昇していた(23.9 vs. 6.1 mg/dl, p = 0.0003)。NF発症時のd-ROMs値が低い場合、注意深くNFの経過を観察する必要があると考えられた。

2010年 徳田浩一

Tokuda K, Nishi J, Imuta N, Fujiyama R, Kamenosono A, Manago K, Yoshifumi K. Characterization of typical and atypical enteroaggregative Escherichia coli in Kagoshima, Japan: biofilm formation and acid resistance. Microb Immunol 201054(6):320-329

腸管凝集性大腸菌(EAEC)は、小児下痢症を引き起こす新興腸管病原菌として注目されている。本研究は、転写調節因子AggRを保有するtypical EAECと保有しないatypical EAECの双方について細菌学的特徴の解明を目的とした。小児下痢症患児の便より検出された大腸菌を定量的バイオフィルムアッセイでスクリーニング後、HEp-2細胞付着試験で凝集性付着を示した株をEAECと判定し、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)O血清型別、病原遺伝子PCR検査、薬剤感受性試験、酸耐性試験を実施した。2,417人の便から102株(4.2%)のEAECが検出され、病原遺伝子保有パターンやPFGEO血清型別に多様性が認められた。バイオフィルム形成能に有意差は認めなかったが、特定の抗菌薬(AMPC, CTX, TC)及び酸(塩酸、乳酸)に対して、typical EAECatypical EAECより有意に強い耐性を示した。typical EAECがより病原性の強いことが示唆されたが、atypical EAEC固有の病原遺伝子の存在など不明な点も多く、さらなる研究が必要である。

2008

永迫博信藺牟田直子藤山りか根路銘安仁

 

根路銘安仁

Nerome Y, Imanaka H, Nonaka Y, Takei S, Kawano Y. Frequent intravenous methylprednisolone pulse therapy is a predictable risk factor for steroid cataracts in children. Pediatrics International 50:541-545, 2008

(頻回のメチルプレドニゾロンパルス療法は、小児におけるステロイド白内障の危険因子である。)

【序論および目的】小児においても、リウマチ性疾患を含めた多くの疾患に対して長期副腎皮質ホルモン治療が行なわれている。その中でも白内障はよく知られた副作用であり、若年者であってもしばしばレンズ置換術が必要となる症例を経験する。これまでそのステロイド性白内障の発症危険因子としては、総副腎皮質ホルモン投与量、投与期間、高用量投与、人種、年齢等が報告されているが、十分に明らかにされたとはいえない。そこで、危険因子を決定し回避することで白内障発症を予防するため、小児リウマチ性疾患を対象に、白内障の発症危険因子を検討した。

【対象および方法】鹿児島大学病院小児科および眼科を定期受診しているリウマチ性疾患患児34例を対象とした。男女比は1222で、疾患別にはSLE23例と最も多かった。診療録より、性別、副腎皮質ホルモン開始年齢、副腎皮質ホルモン総投与量、平均1日投与量、メチルプレドニゾロンパルス療法の回数、副腎皮質ホルモン投与期間、および眼科で白内障を指摘された時期を抽出し、それらと白内障発症との関連についてKaplan-Meier法を用いて2群間での累積白内障発症率で検討し、Cox hazards proportional regressionモデルを用いて多変量解析した。

【結 果】34名中11名が白内障を発症し、発症までの平均期間は1.2±1.0年と短かった。プレドニゾロン換算総投与量では、白内障発症者では平均13,859±6,805mgであり、非発症者の平均総投与量24,321±18,436mgと有意差はみられなかった。男女別の白内障発症率は、男性5/12、女性6/22であり、有意差はなかった(p0.20)。

副腎皮質ホルモンの開始年齢で検討すると、白内障は12歳未満開始群で有意に高率に発症していた (p<0.05) 。また、メチルプレドニゾロンパルス療法を2回以上施行した群では、1回以下の群より有意に高率に白内障を発症していた (p<0.05)

メチルプレドニゾロンをプレドニゾロンに換算して3か月間毎に平均副腎皮質ホルモン投与量を評価すると、2.0mg/kg/day群では白内障の発症率がそれ以下の群と比して有意に高かった(p<0.05)。しかし、メチルプレドニゾロンパルス療法のステロイド量を除いた場合の平均副腎皮質ホルモン量は、白内障発症、非発症の2群間で有意差は認められなかった。さらに多因子解析したところ、副腎皮質ホルモン開始年齢が12歳未満、メチルプレドニゾロンパルス療法を2回以上施行例がステロイド白内障の発症危険因子であった。

【結論及び考察】

今回の検討では、ステロイド性白内障の発症に、性別、副腎皮質ホルモン総投与量、平均1日投与量、副腎皮質ホルモン投与期間の関与は認めなかった。一方、低年齢からのステロイド投与開始は、これまでの報告と同様白内障発症の危険因子であった。また、今回の検討ではメチルプレドニゾロンパルス療法の回数が白内障発症の危険因子であったが、このような報告はこれまでになく新知見と思われた。低年齢にメチルプレドニゾロンパルス療法を複数回以上行うと白内障を発症しやすい機序については検討できていないが、水晶体での副腎皮質ホルモン代謝の未熟性によるものでないかと推測している。頻回の副腎皮質ホルモンパルス療法を必要とする若年齢の小児リウマチ性疾患児は、眼科医による定期観察が必要であり、このようなリスクを有する患児ではシクロフォスファマイドパルス療法や生物学的製剤のようなステロイド以外の他の治療法を早めに選択する方がよいかもしれない。

藤山りか

Fujiyama R, Nishi J, Imuta N, Tokuda K, Manago K, Kawano Y. The shf gene of a Shigella flexneri homolog on the virulent plasmid pAA2 of enteroaggregative Escherichia coli 042 is required for firm biofilm formation. Current Microb 56(5):474-80 2008

【序論および目的】

 腸管凝集性大腸菌(enteroaggregative Escherichia coli, EAEC)は、近年新興腸管病原菌として発展途上国だけでなく先進国でも注目されている。EAECは、持続感染に関与する厚いバイオフィルム形成を特徴とし、腸管粘膜へ強固に付着した後、エンテロトキシンを分泌して病原性を発揮する。大部分のEAEC株は100-kbの病原プラスミドpAA2を保有しており、そのシークエンスからpAA2上には赤痢菌プラスミドのクラスターと蛋白質レベルで93%相同性をもつ3つの連続した遺伝子群、shfcapUvirKcap locus)が存在することが明らかになっている。本研究では、EAEC プロトタイプである042cap locusの各遺伝子欠損株を作成し、EAECの病原性におけるcap locusの役割を調べた。また、EAECのいくつかの病原遺伝子を制御する転写調節因子AggRとの関連も検討した。

【材料および方法】

 shfcapUvirK遺伝子の挿入欠損株作成は、pJP5603プラスミドを使用したsingle crossover法で行った。また、shf欠損株にelectroporation法によりshf遺伝子を再導入しコンプリメント株を作成した。マイクロタイタープレートアッセイは、24穴ポリスチレンプレートを用い0.45%グルコース添加Dulbecco’s modified Eagle’s mediumDMEM)中で20時間培養後、浮遊細胞を除去し、底部に沈降付着した菌体をPBS 500μlで回収し吸光度(OD600)を測定した。バイオフィルム形成能は、20時間培養後のプレートをPBS3回洗浄後に底部に付着した菌体を同様に回収しOD600を測定して定量化した。AggRによるshf遺伝子の制御については、aggR欠損株およびアラビノース誘導性の発現プラスミドpBAD30を用いたaggRコンプリメント株において、RT-PCR法で検討した。

【結 果】

 作成した欠損株は、いずれも液体培地中での増殖度に変化なく、肉眼的な凝集性も変わらなかった。マイクロタイタープレートアッセイにおいて、沈降付着した菌体数は042野生株、shfcapUvirK欠損株ともに全て同程度であった。しかし、バイオフィルム形成能については、shf欠損株(OD600: 0.230±0.007)が、042野生株(0.564±0.022)に比べて著明に低下していた。一方、capU欠損株(0.600±0.041)、virK欠損株(0.585±0.034)のバイオフィルム形成能は、042野生株と同等であった。shf遺伝子のコンプリメント株は、042野生株と同程度までバイオフィルム形成能を回復した。shf遺伝子の転写は、野生株に比べてaggR欠損株で著明に抑制された。一方、aggRコンプリメント株では、aggRの転写が増強するアラビノース添加条件で、shf遺伝子の発現が明らかに増強した。

【結論及び考察】

 作成した3欠損株は、野生株に比べて液体培地における凝集性に変化はなかったが、shf欠損株だけはバイオフィルム形成能が低下していた。また、shf欠損株にshf遺伝子を再導入するとバイオフィルム形成能は回復しており、shf遺伝子がEAEC 042株のバイオフィルム形成に重要であることが明らかになった。我々は当初、cap locusの3つの遺伝子、shfcapUvirKがともに同じ機能を果たしていると推測したが、今回の結果では3遺伝子中shf遺伝子のみが単独でバイオフィルムに関連していた。遺伝子ノックアウトがその下流にある遺伝子転写に影響を与えるいわゆるpolar effectについては、shfの下流にあるcapUvirK遺伝子のバイオフィルム形成能が野生株と変わらなかったことから否定できると考えた。

 shf遺伝子は、表皮ブドウ球菌のバイオフィルムに関与する遺伝子群ica locusicaB遺伝子とホモロジーがあることが報告されている。ica locusは、細胞間接着に重要なpolysaccharide intercellular adhesin (PIA)の形成に関与しており、その中のicaBpoly-N-acetylglucosamine分子の脱アセチル化 を担っていることが明らかになっている。バイオフィルム形成過程は、固定相に細菌が付着することから始まり、その後産生された多糖体を介した細胞間接着が起こり何層もの細菌層が形成される。マイクロタイタープレートアッセイにおいて、底部に自然沈降したshf欠損株の菌量は洗浄前には野生株と同程度であったが、洗浄によって容易に減少したことから、shf欠損株ではバイオフィルム形成過程における細胞間接着能が低下していることが推測される。shfが、このようなPIA形成に直接関わっているかについての検討が今後必要である。

 転写調節因子AggRは、EAECのプラスミドpAA2上にあり、線毛遺伝子aafA、毒素遺伝子pet、凝集抑制因子aapAapの外膜輸送蛋白aatAなどの病原遺伝子を正に制御しており、EAECが病原性を発揮する上できわめて重要な転写因子である。今回、shf遺伝子もAggRによって正に制御され、AggR regulonのひとつであることが明らかになった。shf AggRの制御のもとに、どのようにバイオフィルム形成に関与するかが今後の研究課題である。

 

藺牟田直子

Imuta, N., Nishi J, Tokuda K, Fujiyama R, Manago K, Iwashita M, Sarantuya J, Kawano Y. Escherichia coli efflux pump TolC promotes aggregation of enteroaggregative E. coli 042. Infect Immun 76(3):1247-1256, 2008

大腸菌異物排出ポンプTolCは腸管凝集性大腸菌042の凝集を促進する

【序論および目的】

 腸管凝集性大腸菌enteroaggregative E.coli (EAEC)は、発展途上国における小児の持続性下痢症の原因菌として知られているが、最近では先進諸国でも注目されている。本菌は、特有の線毛AAFにより腸管粘膜に凝集性に付着し、強固なbiofilmを形成する。我々はこれまでに、EAEC 042株の外膜蛋白AatAが、菌体同士の過度の凝集を防ぐ凝集抑制タンパクAap (dispersin)の外膜外への分泌を促進していること、および立体構造モデルの比較からAatAが大腸菌異物排出ポンプTolCのホモログであることを報告した。TolCは、大腸菌に広く存在する外膜蛋白で、内膜とペリプラズムに存在するアダプター蛋白とともに抗菌薬などの異物や毒素の外膜輸送を担っており、立体構造解析や薬剤耐性メカニズムの研究で注目されている。本研究では、TolCAatAと同様にAapを分泌するかどうか、また凝集をはじめとするEAECのビルレンスに関与しているかを明らかにすることを目的とした。

【材料および方法】

 Homologous recombinationを用いた挿入変異によってtolC欠損株とaatAtolC両欠損株を作成し、さらにtolC欠損株にelectroporation法によりtolC遺伝子を導入しcomplement株を作成した。Aap分泌能は、培養上清のAaptricholoroacetic acid (TCA)沈降し、抗Aap抗体を用いたWestern blotで検討した。細胞表面の疎水性は、硫酸アンモニウムを用いたスライド凝集法で確認した。凝集性はHEp-2細胞付着試験で観察するとともに、フローサイトメーターで凝集槐の大きさを定量的に測定した。マイクロタイタープレートアッセイは、24穴ポリスチレンマイクロタイタープレートで一晩培養後、浮遊細胞と底部に沈降した菌体を回収し、平板培地で生菌数を測定した。さらにウェルを洗浄後、底部に残存したbiofilm内の付着生菌数を同様に定量化した。Transwell assayでは、透過膜を介して野生株と欠損株を共培養し、沈降細胞を定量化して相互作用を検討した。Biofilmと菌体表面形状は走査電子顕微鏡で観察した。いずれの実験も、液体培地として0.45%グルコース添加Dulbecco’s Minimal Essential Mediumを用いた。

【結 果】

 tolC欠損株およびaatAtolC両欠損株のAap分泌は、それぞれ野生株およびaatA欠損株と差がみられず、TolCAap分泌に直接関連していないと考えられる。しかし、tolC欠損株は、野性株およびcomplement株に比べて液体培養中での凝集性が明らかに低下しており、またHEp-2細胞付着試験やフローサイトメーターによる解析でも凝集性低下が確認された。tolC欠損株の細胞表面疎水性は、野生株とcomplement株に比べて低下していた。マイクロタイタープレートアッセイでは、tolC欠損株の浮遊細胞数は野生株に比べて有意に多く、沈降菌数は有意に少なく、付着細胞数も低下していた。一方、complement株の付着性は、野生株と同程度に回復した。静置培養下に凝集・沈降を経時的に観察すると、野生株では自己凝集により9~12時間後に急激な浮遊細胞の減少と沈降細胞の増加が見られたが、tolC欠損株では観察されなかった。Transwell assayにおいて、tolC欠損株を透過膜を介して野生株と共培養すると、tolC欠損株同士の培養に比べて、浮遊細胞が有意に減少し、沈降細胞が有意に増加した。Complement株との共培養でも、野生株と同等に凝集性が回復した。走査電子顕微鏡では、野生株に特徴的な線毛による菌同士の凝集が、tolC欠損株で低下していた。

【結論及び考察】

 EAEC 042株において、TolCAap分泌には関与していなかったが、液体培地中での特徴的な凝集およびポリスチレンへの付着・biofilm形成に不可欠であることが明らかになった。tolC欠損株の凝集能が低下したメカニズムの1つに、細胞表面の疎水性の低下が考えられる。EAECの線毛AAFは高い疎水性を持ち、強い凝集を引き起こすことから、線毛機能の低下あるいは、発現低下が背景にあることが推定される。また、Transwell assay の結果から、tolC欠損株の凝集を回復させる液性の凝集因子が、TolCを介して野生株から排出され、線毛機能を修飾している可能性が考えられる。一方、凝集付着の経時的観察から、野生株では、ある一定の菌濃度に至ると急速に凝集が進むが、tolC欠損株ではそれが起きない現象は、TolCがクォラムセンシングに関与している可能性も示唆される。TolCはこれまで主に薬剤排出ポンプとして研究が進んでいるが、本研究により大腸菌の凝集・付着に関与していることが初めて明らかになり、TolCの病原性発現における役割の新たな研究につながると考えられる。

 

永迫博信

Nagasako H, Kiyoshi Y, Ohkawa T, Kaku Y, Koriyama C, Hamada K, Kawano Y: Estimation of 24-hour urine protein quantity by the morning-urine protein/creatinine ratio. Clin Exp Nephrol. 11(2):142-6, 2007

早朝尿蛋白/クレアチニン比を用いた24時間尿蛋白量の推定

【序論および目的】

 腎疾患の臨床分野で24時間尿蛋白量(Up)の把握は重要である。しかし、外来治療では正確な蓄尿ができているかどうかを確認できないし、特に小児では蓄尿自体が難しくUpの正確な測定には難渋してきた。早朝尿蛋白/クレアチニン比(早朝尿P/Cr)とUpの相関を検討して早朝尿P/Crを用いたUpの回帰式が作成されてきたが、報告された回帰式は施設あるいは研究ごとに異なり、早朝尿P/Crを用いて正確にUpを推定できる普遍的回帰式はない。今回我々は、回帰式で無理に不正確な定量値を推測する方法ではなく、臨床的意義が高いUp値に達しているかどうかを半定量的に推定する方法を作成し、その方法が他の施設でも有用であるかどうかを検討した。

【材料および方法】

 対象は県立宮崎病院に入院した腎疾患患児34症例(309検体)。早朝尿と日中尿のP/CrUp及び24時間尿蛋白量/体表面積(Up/BSA)の相関を検討した。次にUp/BSA0.5以上、1.0以上となる早朝尿P/CrCut-off値をROC分析にて求め、その予測値の妥当性を検討した。その後、鹿児島大学医学部附属病院、 鹿児島市立病院で得られた検体で、その推定方法の普遍性を検討した。

【結 果】

 早朝尿P/CrUpよりもUp/BSAとの相関が強かった。Up/BSA0.5以上あるいはUp/BSA1.0以上を予測するのに最も適した早朝尿P/Crはそれぞれ1.0以上と2.0以上であり、それらの有効度も高かった(有効度:Up/BSA 0.5以上で88.0%,Up/BSA 1.0以上で 90.9%)。得られた結果を他の2施設の検体で評価したが、両施設でも感度と特異度のいずれも80%以上、有効度が85%以上であった。

【結論及び考察】

 Up/BSA1.0以上であることは糸球体蛋白の存在を示唆し、糸球体障害の指標として利用される。また、Up/BSA0.5以上や1.0以上は腎生検適応の検討に利用されている。我々の検討結果では、早朝尿P/Cr1.0あるいは2.0以上であるときは、Up/BSA0.5あるいは1.0以上であることが有効度85%以上で推測される。本法は早朝尿を用いて臨床的意義の高いUp値推定できる簡便な方法であり、小児腎疾患児の管理において極めて有用である。