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2. 大脳神経細胞の興奮性獲得のメカニズムと疾患

神経系は化学シグナルとともに、電気シグナルで情報をやりとりするシステムですが、そもそも神経細胞は、発生過程のいつ、どのように興奮性を獲得するのでしょうか? マウス大脳の発達過程では、胎生後期から生後初期にかけて、神経幹細胞から分化した神経細胞が細胞移動し、自らの層に到達すると樹状突起や軸索を発達させ、シナプスを形成して、ネットワークがつくられます。私たちの蛍光タンパク質による神経細胞可視化と神経活動記録実験から、大脳興奮性神経細胞は細胞移動の時期までは興奮性が低く、細胞移動を終了して樹状突起形成がはじまると興奮性が亢進することがわかりました(Bando et al., 2016)。さらに、神経活動を操作して細胞移動の時期から興奮性を亢進させると、細胞移動が障害されて移動を終了する前に樹状突起形成がはじまることがわかり、発達過程に応じて細胞興奮性の成熟が進むことが大脳の回路形成に重要であることが示唆されました。

同様の実験から、細胞移動の時期に静止電位調節に重要なK+チャネルの1つKCNK9の発現機能を阻害すると、興奮性が亢進し、細胞移動が障害されることも明らかにしました(Bando et al., 2014)。KCNK9はヒト遺伝性発達障害Birk Barel mental retardation syndromeの疾患原因遺伝子であり、大脳興奮性神経細胞の細胞移動障害がこの疾患の一因である可能性が示唆されました。

イオンチャネルの変異が大脳神経細胞の初期興奮性制御の異常を引き起こし、疾患につながっている例が他にもあると考えられ、さらに研究を進めています。

細胞移動→樹状突起形成イメージ図

説明(左)マウス大脳の発達過程では、胎生後期から生後初期にかけて、神経幹細胞から分化した興奮性神経細胞が細胞移動し、自らの層に到達すると樹状突起や軸索を発達させる。神経細胞は細胞移動の時期までは興奮性が低く、細胞移動を終了して樹状突起形成がはじまると興奮性が亢進する(Bando et al., 2016)。(右)細胞移動中の静止電位の調節にKCNK9が深く関わり、その機能発現阻害は細胞移動障害につながる(Bando et al., 2014)。細胞移動を終了して樹状突起形成がはじまる時期にはNa+チャネルが発現機能して、興奮性が亢進する(Bando et al., 2016)。簡略化のため省略しているが、それぞれの時期に他のイオンチャネルも発現しており、細胞興奮性の制御・調節に関与している。

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