第30回:作業療法
障害超えて家事、趣味を
人はだれでも、社会や家庭で何らかの作業や仕事に携わっています。ところが事故や脳卒中、リウマチで障害を持つと、自分にはもう何もできないと思ってしまいがちです。また、周囲にも、障害のある人に無理に仕事をさせなくても、と思う人がいるでしよう。
しかし人間は、障害があっても少しでも動き、残された機能を使って作業したり、物を作ったりすることを喜ぶものです。こういった作業を通して機能回復を目脂すことがリハビリの「作業療法」であり、最終目標である家庭復帰や職場復帰にもつながっていきます。
女性のAさん(62)は脳出血が原因で右片まひになり入院、約6カ月後に当センターに転院してこられました。すっかり自信をなくし、「もう何もできん」と落ち込んでいました。
リハビリではまず、歩行や食事、洗面、排せつ、入浴などの日常生活訓練に取り組みました。それらはかなり上手になりましたが、左手だけでは細かい作業はできません。そこでまひした右手に代わり左手を利き手として使う「利き手交換」の訓練を始めました。
訓練では左手で字を書いたり、左手にはしを持って食事をしにりする陳習、そして包丁を持つ調理訓練へと進みました。キャベツや大根を大きく切ることから始め、次第に小さく切り、ジャガイモの皮をむく練習へと進みました。
初めは左手で包丁を持つことにしり込みしていたAさんも、慣れてくると積極的に料理に取り組むようになりました。シチューや煮しめが作れるようになったころにはすっかり自旨を取り夷し、笑顔が出るようになってきました。Aさんは単なる障害者から主婦に戻ったのです。
若い人なら職業訓練を経て片手で仕事をしている人も、車いすで勤務を続けている人もいます。群馬県の星野富弘さんのように、四肢まひの障害を持ちながら口に絵筆をくわえ、詩画集や個展で多くの人に感動を与える人もいます。
脳卒中やリウマチは病気ですが、その結果としての歩けない、字が書けない、炊事ができないというのは「障害」であり、その多くはリハビリで克服できるものです。できるだけ自立して、家庭の役割を担い、趣味を楽しむという人間としての能力を回復させるのが作業療法であり、リハビリの目指す「全人的医療」なのです。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・鎌田克也、田中信行)
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