第31回:多発性硬化症
再発にめげず前向きに
多発性硬化症は、神紹線維を包む髄鞘(ずいしょう=電線を包むビニールのようなもの)が、何らかのアレルギー反応で障害を受け、神経の伝導が悪くなる病気です。日本人には比較的少ない病気ですが、脳や脊髄(せきずい)のどこに起こるかでいろいろな症状が現れます。
初発症状としては視神経がやられて視力低下を起こす人が多く、次第に手足のまひやこわばり、しびれ、膀胱(ぼうこう)の障害などが出てきます。神経の中心の電線に当たる軸索は残っているので、数日から数カ月で自然に症状が軽くなるのが特徴です。しかし再発を繰り返しつつ悪化するので、機能回復のためのリハビリが非常に大切です。
Kさん(47歳、女性)は右目が見えにくくなり、眼科で入院治療をして、いくらか視力は回復しました。しかし、数カ月後に右半身のこわばりと筋力低下が現れ、次第に症状か強くなり、ついには自分で起き上がるのも困難になりました。排尿も難しくなり、膀胱にカテーテルを入れなければならなくなりました。
われわれのリハビリテーションセンターへ入院後、アレルギー反応を抑えるステロイドの大量療法を行いました。これで視力はだいぶ改善し、さらに筋肉のこわばりや膀胱の収縮力を高める内服薬を使いながら、寝返りや起き上がりから始め、立ち上がり・歩行訓練へと進めました。足先の強い突っ張りは短下肢装具で抑えられ、5カ月後にはつえで歩けるまでになりました。身の回りの日常生活動作も排尿も自分でできるようになり退院しました。
多発性硬化症に対する特別なリハビリがあるわけではありません。基本的には、現れている脳や脊髄の障害に対し適切なリハビリを組み合わせて行うことになります。自分で動けるようになったKさんは、毎日自主訓練を続け、退院後に装具なしで、つえだけで歩けるようになりました。
残念ながら多発性硬化症のはっきりとした原因はわかっていません。この病気は改善と再発を繰り返します。Kさんも数回の再発を繰り返しています。しかし弱音を吐くことなく、リハビリに取り組み、障害を乗り越えてきました。私たちスタッフも、常に前向きに自分の障害に取り組むKさんの姿から、生きる姿勢を教えてもらっています。
(鹿児島大学医学部リハビリテーションセンター・飯山準一、田中信行)
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