第54回:心筋梗塞の運動訓練

心電図見ながら慎重に

 心臓は、酸素と栄養に富む新鮮な血液を全身に送り出し、炭酸ガスや老廃物を含んで戻ってきた静脈血を肺に送り出すための、筋肉(心筋)でできたポンプです。この心筋に栄養を与えるのが「冠動脈」です。心筋梗塞(こうそく)とはこの冠動脈が動脈硬化や血栓で詰まり、心筋が壊死してしまうものです。
 突然の胸が締めつけられるような激しい痛みや呼吸困難が症状の特徴です。すぐ心臓専門病院で冠動脈造影を行ってください。発症から5、6時間以内であれば血栓溶解剤を注入したり、詰まった血管に挿入した細い風船付きカテーテルを膨らませて内腔(くう)を押し広げる対処法があります。これで血流が再開すれば劇的に良くなります。
 通常は、きつい作業や夜間に胸が痛くなる狭心症の前兆があります。この時期に病院で処置を受けるのが最も良いのです。心筋梗塞を起こしてしまうと心臓の収縮力が低下するため、体全体の運動能力ががくんと落ちます。そこで、「生き残った心筋」を徐々に強化して運動能力を取り戻すリハビリが必要になってきます。
 発症後3日程度は絶対安静です。その後心電図や自覚症状を見ながら、座ったまま手足の屈伸運動を始めます。1週間−10日目には立ち上がって病室内を歩行、2週間目には廊下歩行から訓練室での軽い運動(自転車エルゴメーターなど)と進んでいきます。3週間から1カ月たち、時速4、5キロの歩行や軽いピンポンができるようになったら退院です。
 この間は不整脈や狭心症に十分注意してください。決して無理はいけません。狭心症薬のニトロ剤や酸素吸入も、すぐ使えるよう整えておきます。リハビリではリズミカルな手足の運動を大事にして、重い物の持ち上げや、努力しなければならないような運動は絶対避けてください。
 退院後も高血圧や糖尿病、高脂血症、肥満の管理に努め、再発防止薬の服用やニトロ剤の携帯を忘れないでください。夫婦関係も通常2カ月経過すれば大丈夫ですが、ニトロ剤と勃起不全に効くバイアグラの併用は禁忌です。ぬるめの入浴(39−40度に10分間)やサウナ(60度で15分)は血管を広げて冠動脈血流を増やし、心不全症状も改善してくれます。冬は部屋を暖かく保つのも大切なことです。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・堀切豊、田中信行)

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