第61回:老人性肺気腫

禁煙と呼吸訓練で改善

 肺の中の空気の通路は、まず気管が次々に枝分かれし、最後には針の先ほどの小さな空気の袋(肺胞)になります。この袋が呼吸するたびに伸び縮みして、新鮮な酸素の多い空気を吸い込み、汚れた炭酸ガスの多い空気を吐き出します。
 肺気腫(しゅ)とはこの肺胞が伸びきったゴムのように弾力を失い、ガス交換がうまくできなくなる病気です。肺胞が縮まないので息を十分に吐き出せず、汚い空気が肺にたまるわけです。主な原因はぜんそくや慢性気管支炎です。しかし最近は加齢性、すなわち老人性肺気腫が増えています。悪化させる一番大きな原因が喫煙です。
 肺気腫の治療には気管支拡張剤や去痰(たん)剤が有効ですが、一度破壊された肺胞の修復は非常に難しいものがあります。このため、肺にたまった汚い空気を効率よく吐き出し、新鮮な空気を吸い込むという呼吸法や、痰を吐き出す訓練が重要になります。
 肺気腫で通院していたAさん(70歳、男性)は、風邪から気管支炎を起こして入院しました。動脈血の酸素濃度50トール(正常では75トール)とかなりの低酸素状態です。
 まずは抗生物質や気管支拡張剤、酸素吸入などを施し、症状が改善してから呼吸訓練を始めました。口をすぼめてゆっくりと、しかし十分に息を吐きます。息を吐き出すときに軽い抵抗がかかる訓練用の器具も使って、腹式呼吸を徹底しました。排痰訓練は、気管支拡張剤を吸入してから四つんばいになって頭を低くし、約10−15分間背中と胸を軽くたたき、せきをして痰を出します。この練習を朝夕2回行いました。
 弱った手足の筋力強化も大変重要です。Aさんは運動すると息が上がるため、初めは酸素を吸いながら歩行訓練や筋力強化訓練をしていましたが、次第に酸素はいらなくなり、呼吸も筋力も改善して退院しました。
 肺気腫では、まず禁煙しなければなりません。痰を出しやすくするために水分を十分取り、冬の間は風邪や気管支炎予防のため外出を控え、マスクやうがいを心がけ、部屋を暖かくし、湿度を高めにするなどの注意が大切です。
 それでも低酸素の状態が続く場合には「在宅酸素療法」があります。携帯用の酸素ボンベや酸素濃縮器を使えば屋内はもちろん、屋外でも元気に動けるようになります。患者さんのQOL(生活の質)を維持した生活が、いまや可能となっています。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・宝蔵次郎、田中信行)

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