第62回:糖尿病の運動療法

食事と薬物併用で効果

 糖尿病は、糖の代謝に重要なホルモンであるインスリンの不足、あるいはインスリンへの体の反応が鈍いために血中のブドウ糖値(血糖値)が高くなる病気です。治療はまず食事療法、インスリンの分泌や反応を良くする薬、場合によってインスリン注射が必要です。また運動療法も効果的な治療法です。
 まず、食事療法や薬である程度血糖値の調整をしてから運動療法を始めます。歩行や自転車こぎは全身を使ったリズミカルな運動で、毎日手軽に行えます。水泳やテニスなどもできますが、1分間の脈拍が100〜120、1日40〜50分ほどの運動になるよう、楽しめる範囲で行います。大量に汗をかいたり、ぐったり疲労するほどというのはかえって良くありません。
 74歳、女性のA子さんは、15年来の糖尿病と変形性ひざ関節症による痛みで入院されました。入院時の血糖値は、空腹時で1デシリットル当たり223ミリグラム、食後は同426ミリグラムとかなり高い値でした。
 腎臓、網膜、神経に軽い合併症はありましたが、心臓は異常ありません。まずは食事療法を1日1200キロカロリーで開始、薬の調整も行いました。
 運動療法では、ひざ関節痛に効く大腿四頭筋の筋力増強訓練と、体重のかからない水中歩行を週2回、約30分ずつ始めてもらいました。次に毎日15分の自転車こぎ、ウオーキング3000歩を加えました。入院2カ月後には、A子さんの体重は65.5キロから63.0キロに、血糖も空腹時109ミリグラム、食後129ミリグラムと大幅に改善しました。体重は大して変わらなくても運動で筋肉が増えているので、実際の脂肪は4〜5キロ減っているのです。血糖コントロールが非常に悪い状態の人や重症の糖尿病性の網膜症、腎症、神経症の人、また心臓に障害があったり手足の血行障害がある場合は運動療法は行えません。
 運動は、糖分を消費するだけでなく代謝の良い筋肉を増やし、脂肪組織を減らします。またインスリンの分泌や反応を高め、心臓や筋、骨関節の機能も改善してくれるのです。医師の指導の下、食事療法、内服薬と併用して適切な運動を継続してください。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・松窪いずみ、田中信行)

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