第65回:関節可動域制限
発症初日から毎日訓練
脳卒中や骨折などで長期間動けなかったり寝たきりでいると、「廃用性障害」といわれる障害が起こります。高齢になるほど起こりやすく治りにくいため、早期にリハビリを始め ることが大切になってきます。
廃用性障害の中でもいったん起こるとやっかいなのが、「関節可動域制限」というものです。関節を動かす筋肉やじん帯、関節を包む膜にはコラーゲンという物質が多く含まれています。この物質は常に動かしていないと硬くなり、ついには関節全体を全く動かせなくしてしまいます。これが「拘縮」という状態で、肩や足の付け根、ひざ、足首で特に起こりやすく、体を動かすにも大きな支障が出てきます。
拘縮で股(こ)関節が曲がらなければ座りにくくなり、逆に曲がったまま固まってしまうと座るのも立つのも難しくなります。ひざや足首の関節が曲がらなければ、ベッドから車いすへの移乗も困難でしょう。いずれも寝たきりの大きな原因になります。
拘縮の予防には、できる限り発症したその日から訓練を始めるようにしてください。主治医や理学療法士の指導の下、手足の「すべて」の関節を動かせる範囲でできるだけ広く10回以上、1日2回は動かします。
特に高齢者で意識障害やまひがある場合は、ベッドサイドで理学療法士や家族が毎日動かしてあげる必要があります。この運動は退院しても毎日欠かせません。家族がする場合は、本人の訴えや表情を見ながら、痛まない程度に行います。高齢者は骨粗しょう症で骨がもろくなっていることが多いので特に注意しながら、ゆっくり動かすことが大事です。
すでに可動域制限や拘縮が起こってしまった場合は、専門の理学療法士でないと改善は困難です。まず入浴や温熱療法でコラーゲンを柔らかくしてから、訓練していきます。拘縮がひどい場合は装具や器具を使っての矯正も必要です。
関節の動きは人間活動の基本です。入院中に本人、家族そろって正しい訓練法を教わり、関節の動きを保つことがより早くベッドから起きあがり、歩行のリハビリを始める第一歩になります。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・弓場裕之、田中信行)
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