第67回:脊椎牽引療法
骨の圧迫やズレを改善
人間の脊椎(せきつい=背骨)は頸椎(けいつい=首の骨)から尾骨まで33個の骨が重なってできています。その中を脊髄が通り、さらにその脊髄から多数の末しょう神経が、骨と骨の間を通って出てゆきます。
この骨は、年齢や労働、外傷のために変形したり(脊椎症)、骨と骨の間にある椎間板(ついかんばん)が飛び出したり(椎間板ヘルニア)してきます。この変形した骨や椎間板が脊髄や末しょう神経に当たるようになると、体の一部に強い痛みやしびれ、運動まひなどが起こってきます。この変化は、頸椎と腰椎が最も起こりやすい場所です。
牽引(けんいん)療法の目的は、首や腰を引っ張ることにより、骨同士の圧迫を軽減したり、ずれを矯正することです。
牽引は、頸椎・腰椎はいずれも軽く前方に屈曲しているため、首は少し前屈させ、下肢は股(こ)関節を約60度に曲げた姿勢で行います。「持続牽引」と、「間欠牽引」の2つの方法がありますが、脊椎の場合は主に後者が用いられます。牽引(緊張)と休止(弛緩=しかん)を繰り返すことによって、背骨周辺のこわばった筋肉や靱(じん)帯の血流が改善されるなどの効果もあります。
引っ張る力の強さは、頸椎牽引の場合は8キロから最大15キロまで、腰椎牽引の場合では15キロから体重の半分までで、初回はいずれも最軽量から始めます。時間はともに10分から始めて最大20分までです。しかし、安易な牽引は症状を悪化させることもあるので、整形外科医の診断を受けて適正に行うべきです。
Nさん(62)は、今年2月ごろから右後頭部から右肩、上腕に痛みとしびれが出てきました。握力も7、8キロに低下し、5月には頭痛もしてきました。第3−第6頸椎の頸椎症と診断され、外来リハビリで間欠牽引と弱った筋力の訓練を始めました。牽引は週に3回行うことにし、8キロから徐々に強めて15キロまで上げました。肩の強い痛みや頭痛は3、4回目でとれましたが、しびれ感や指の力の回復には1カ月以上かかりました。
牽引療法は、温熱療法や頸椎カラー、腰椎コルセットなどと併用すると、より効果が高まります。しかしあくまで保存的治療法なので、効果がない場合や痛みが悪化する場合は、整形の専門医に十分相談することが大切と思われます。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・白浜幸高、田中信行)
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