第68回:内視鏡的胃瘻造設術

十分な栄養、安全に摂取

 嚥下(えんげ)障害は、脳卒中をはじめ、口腔(こうくう)や咽頭(いんとう)、食道の病気や手術などさまざまな原因で起こります。単にものがのみ込めないもの(嚥下困難)から、水や食物が気管内に流入するもの(誤嚥)まで障害の程度も多様です。物がのみ込めないだけでも、栄養上の大きな問題です。さらに誤嚥が起こると、気管支炎や肺炎を起こしますし、場合によっては、窒息して生命の危機にさらされることもあります。
 一般に脳や神経の障害によるものはその原因を治すことは難しいため、造影剤を食物に混ぜ、レントゲンで嚥下の様子を観察し(嚥下造影検査)、のみ込みやすい食物の形態や誤嚥を起こさない姿勢を検討します。その結果からとろみ付きの食事や咽頭のアイスマッサージ、姿勢のコントロールを行い、かなり改善する例も多く見られます。
 しかし、そういう嚥下のリハビリのみでは、必要なカロリーや水分を十分にとれない人もおり、鼻から胃へチューブを留置(鼻腔=びくう=栄養)したり、口から食道内へ管を入れる方法(間欠的口腔ネラトン法)がよく用いられますが、見た目も悪く、手間もかかります。そこで、腹壁から胃に穴をあけ、そこから直接胃に栄養を送る「胃瘻(いろう)造設」が広く行われています。現在、全国で年間約20万例が造設されています。
 Kさん(78歳の男性)は、脳幹出血に伴う片まひと嚥下障害が後遺症として残りました。嚥下造影の結果、プリン、ゼリーなどを少ない量から経口摂取する訓練を始めました。また、のどの氷刺激や、体を少し倒しあごを引いた姿勢での訓練でかなりのカロリーをとれるようになりました。しかし、水分の摂取が十分にできず鼻腔チューブとの併用が必要だったため、胃瘻造設を行いました。
 まず胃カメラをのんでもらい、胃瘻ボタンを設置する場所を決めます。腹壁側から針を刺し、この針穴を通してボタンで腹壁と胃壁をはさみこみます。これで、水分もカロリーも十分に摂取でき、口から食べられるものは、その食感や味覚を楽しむこともできます。
 Kさんは、その後も嚥下訓練を続け、約1年半後には、水分も口から摂取することができるようになり、胃瘻を閉鎖することができました。
 今後さらに普及していくものと思われますが、造設の適応については、胃瘻をつくることで患者さんにどんなメリットがあるか十分に検討した上で判断すべきです。しかし、口からも食べられて、口からとれない水分やカロリーは補うことができ、必要なくなったら簡単に閉じることもできるなど利点が大きく、嚥下障害のリハビリテーションを進めるうえで有用な選択肢の1つです。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・飯山準一、田中信行)

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