第70回:電気生理学的検査
体の負担軽く、高精度
ヒトの脳や脊髄で約140億個といわれる神経細胞は、互いに連絡しあう複雑な神経回路網を形成しています。その働きによって筋肉を動かし、感覚を伝え、呼吸・循環・精神活動に至るさまざまな機能を営んでいます。
電気生理学的検査というのは、これら神経や筋肉の活動の様子と、活動の刺激によって生じる細かな電気現象を記録するものです。患者さんへの負担が少ない検査法として、さまざまな場面で広く行われています。
心電図や脳波はよく知られた電気生理学的検査の一つですが、リハビリテーション科や神経内科、整形外科で最もよく利用されるのが筋電図です。神経を刺激して起こる筋の活動などをみますが(誘発筋電図)、神経の伝導速度の測定もできます。最近は磁気刺激による筋の動きも筋電図で調べており、脳や脊髄の診断に使われます。リハビリでどのくらい機能が回復したか調べるのにも重要な検査になっています。
Sさんは突然右目が閉じなくなり、唇がゆがむということで来院されました。目や唇の周りの筋電図や瞬目反射などの検査の結果から、顔面神経の障害であるベルまひと診断されました。ステロイド内服治療や筋肉の訓練でほとんど後遺症もなく完治され、筋電図も正常化しました。
最近はコンピューターの発達で、手足への軽い電気刺激や目への光刺激、耳への音刺激による脳波の変化を調べ、それを数百回加算することも簡単にできるようになりました。誘発電位といわれるもので、特に脳死の診断には欠かせない検査になっています。リハビリの分野では、感覚の認知や判断という非常に高レベルの脳の動きまでわかるようになっています。
診断や機能評価は、患者さんの状態や医師の所見、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)などの画像検査と含めて総合的に行います。ですが電気生理学検査は今後ますます簡単で、精度が高いものへ発展すると思われます。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・松元秀次、田中信行)
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