第72回:介護者の負担

無理せずに協力求めて

 介護保険が始まって以来、介護が必要なお年寄りや障害者の問題は、さまざまな場で詳細に検討されるようになりました。しかし実際には、介護する側の問題もあります。夫婦2人暮らしで夫が倒れたが、妻も高齢で介護できない−といった場合などです。介護保険ではこういった問題の検討が不十分で、今後の課題になってくると思われます。
 在宅介護で最も問題となるのは、介護にあたる家族の状況です。介護の中心となる人をキーパーソン(かぎとなる人)と言いますが、その人の健康状態や仕事を持っているかどうかが介護を大きく左右します。まだ手のかかる小さな子供や受験生がいないか、ほかに家庭内の問題がないかも重要です。
 一般に、1人の寝たきりのお年寄りを自宅で介護するには、常時介護にあたれる人が1.5人必要といわれます。キーパーソンだけに任せては、疲れて体調を崩したり「燃え尽き症候群」と呼ばれる状態になることもあります。周囲の協力態勢は不可欠なのです。ほかの家族や親類もできるだけ介護に参加し、キーパーソンの相談にのったり愚痴を聞いたり、ねぎらいの言葉をかけてください。
 専門的な介護サービスを上手に利用することもポイントの一つです。ケアマネージャーとケアプラン(介護サービス計画)を立てる際、介護する側の負担が軽くなるようなサービスの利用を考えることが大切です。まずは訪問診療や訪問看護、給食サービスといった外から家に導入するサービスがありますが、それだけではなく逆に家から外に連れ出す通所サービスやショートステイなども活用したいものです。また介護機器の貸与サービスも忘れてはなりません。うまく使えば介護する側の負担は減ります。幅広い視点からの利用を考えてください。
 介護が始まれば、敷居の段差やトイレ、ふろの状況、自宅周辺の環境、そして経済力など物理的な問題が出てきます。将来の自分のこととして、あらかじめバリアフリーの住宅を建てておいたり、年金や民間の保険での経済的な対策も考えておくと良いでしょう。
 介護する側の問題といってもさまざまですが、全体として、介護者に過重な負担がかからないことが重要です。キーパーソンは負担を1人で背負わず、家族や社会の援助を上手に利用することや、そのときになって慌てないよう準備しておくことが大切です。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・田中達也、田中信行)

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