第73回:高齢者の服薬指導

安全な服用に工夫必要

 高齢社会を迎え、患者さんにも高齢者が多くなりました。お年寄りは年齢とともに薬の種類が増えますが、一方で視力や聴力、また理解力も落ちてきます。そのため正しい薬の飲み方や作用、副作用を説明する薬剤師の「服薬指導」が大切になってきています。
 薬剤師には、主治医と患者さんの双方から病状や処方の理由、患者さんの理解度、副作用などを聞き取り、より良い薬物治療を手助けする役割があります。
 私たちの病院の外来にも高齢の患者さんは多く、自分の名前を聞き違えたり、他人の薬を持っていこうとする方がいます。番号付きの薬引換券を取り入れたのはその対策でした。
 個別に工夫できることもあります。87歳のTさんにはいつも、薬袋に「血圧」「脈(不整脈)」「胃」と簡単な説明を大きく書いています。袋に書いてあると「一目で作用がわかり安心です」といわれるのです。またAさんの家庭には、ご自分とご主人2人分の薬が計20種類以上あります。「間違えそう」と話していたので、1回分ずつ一つの袋にまとめて入れる「一包化」を試してみると、非常に喜ばれました。
 記憶力や理解力が落ちてきたお年寄りは「飲み忘れ」と同時に「過剰服用」にも気をつける必要があります。その日飲む薬を整理する箱を作ったり、家族が確認して飲ませる工夫が大切です。特に脳卒中の患者さんで、失語や痴ほうの症状がある場合は、家族への説明も大事になってきます。
 錠剤が飲みにくかったり、顆(か)粒剤が入れ歯に詰まるなら、つぶして粉状にすることもできます。特に嚥下(えんげ=飲み下し)障害がある人は、錠剤を気管に詰まらせるなど危険です。粉末にすれば事故予防になります。とはいえ薬によってはつぶしてはいけないものもありますので、必ず薬剤師に相談してください。
 これからの薬剤師は単に調剤だけでなく、服薬全体を指導するようになってきています。薬の副作用を患者さんに具体的に説明し、症状をチェックしたり、特殊な薬なら血中濃度を測定しての指導も行います。患者さんから薬剤師への要望や質問はまだまだ少ないので、何でも遠慮なく相談していただき、安心して薬とお付き合い願いたいと思います。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・屋地慶子、 宮下正日出、田中信行)

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