第74回:便通調整
食事や薬で個別に工夫
年をとると一般に便秘しやすくなります。特に脳卒中を起こした人はその頻度が高まり、おなかが張って痛んだり、気分不良のためリハビリも進みません。
脳卒中の患者さんや高齢者の便秘は、身体のまひや運動不足のために腹筋や腸の働きが弱まったり、水分摂取量や食事量の低下、便意の低下が原因で起こります。2〜3日に1度は便通があるように、
(1) 早期リハビリで腹筋や腸の動きを刺激する
(2) 1日2000ml以上の水分をとる
(3) イモ、コンニャク、豆類、野菜など繊維の多い食物をとる
などの注意が重要です。早朝に冷水を飲むことも胃腸を刺激して動きを良くしてくれます。食後に必ずトイレに向かい、排便を習慣づけることも良い方法です。
しかし頑固な便秘や腹圧の弱い人なら、緩下剤の内服や浣(かん)腸が必要になることも少なくありません。ときにはがんや炎症による腸管の狭窄(さく)や抗うつ剤、鎮痛剤などの薬剤による便秘もありますので、治りにくい場合は主治医とよく相談することが大切です。
68歳のAさんは、脳卒中による重度の右片まひのため、車いすにやっと座れる程度、食事は鼻からのチューブ栄養という状態で退院しました。運動量が少なく、注入食では繊維分もとりにくいため、どうしても便秘になりがちです。
そこで介護される奥さんに、さまざまな便秘予防法を指導しました。食事ごとにベッドから車いすに移したり、体をふくときはおなかに温湿布を当てたり、マッサージをする。チューブには流動食のほかに水やお茶を1日1400ml、5回くらいに分けて入れる−などです。奥さんもいろいろ工夫されました。もっとも効果があったのは、早朝に牛乳を入れ、午前11時ごろトイレに移して座らせることだったそうです。
42歳のSさんは交通事故で腰から下が完全なまひになりました。十分なリハビリと住宅改造によって、車いすを使いながらも日常生活は自立し、会社の社長としての仕事を今も切り盛りしています。排尿は時間を決めて自己導尿を行い、排便は緩下剤を使って自分で浣腸をしたりしています。しかし便が緩すぎると、移乗などでおなかに力を入れるときに便がもれる(便失禁)ので、固さの調整も大事です。
便秘、便失禁のコントロールは、日常生活やリハビリ上欠かせません。運動と水分、繊維食と適切な緩下剤をキーワードに、各人にあった工夫が大切です。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・三石久美子、田中信行)
目次に戻る