第76回:障害者の職業復帰
周囲の理解、協力が大切
病気や事故に遭い、手足のまひや切断などの障害が残った場合、仕事や学校への復帰はどうすればいいのでしょうか。
20歳、男性のYさんは、友人とドライブ中に運転を誤り、ビルに激突しました。救急車で病院に搬入されたときには言葉も出せず、痛みに少し反応するくらいでした。診断は脳挫傷と骨盤骨折でした。3週間後には言葉は出るようになってきましたが、左手足は動きません。座ることはできるが歩けないということで入院してきました。入院後は装具をつけての歩行訓練、左手まひのリハビリの一方で、右手1本で道具を使ったり、服を着たりする訓練を行いました。集中力に欠けるため、計算や漢字練習などを徹底して行いました。4カ月後には装具とつえを使って歩くようになり、右手1本で日常の食事や排せつ、更衣、入浴などができるようになりました。
日常生活が自立したら次は仕事です。まず朝から夕方までの作業ができるかを見るため、姶良郡姶良町の授産施設に入所し、その後、薩摩郡入来町にある鹿児島障害者職業能力開発校に入りました。身体あるいは知的障害を持った人が職に就くための技能を修得するところです。Yさんはここで今まで経験のない経理を勉強し、いくつか資格を取って、1年後には無事、薬品販売会社に就職することができました。
職業復帰にはいろいろな形があります。一般に元の職場に戻れる人は少なく、配置転換や関連会社に移ったり、Yさんのように新しい技能を修得して新しい仕事に就いたりします。手足にまひがある場合は、主治医やソーシャルワーカーが職場と話し合い、障害や障害への対応策を理解してもらうことが第一歩になります。元の職場に戻る場合は、階段やトイレなどのバリアフリー化、また同僚の理解と協力が欠かせません。
障害者の職業能力や雇用に対する社会の理解、制度はまだまだ不十分です。わが国では、脳やせき髄を損傷した人の職業復帰率は10%台という報告もあります。障害を持った人自身が早期に十分なリハビリや職業訓練に努めることも大事ですが、社会全体の理解が進むことが望まれます。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・緒方敦子、田中信行)
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