第78回:米国の障害者対策

心のバリアフリー定着

 アメリカの進んだリハビリや障害者対策についてはよく耳にします。私は昨年9月から1年間、アメリカ南部のジョージア州にある小さな学生街、アセンズで主婦として生活する機会がありましたので、そこでの経験をお話しします。
 まず身近なところでは、大手スーパーマーケットなら大抵、十分な広さの障害者用駐車スペースが、建物の入り口に一番近い所に確保されています。車いすのデザインが付いた障害者用ナンバープレート専用になっており、それ以外の車を止めた違反者には150ドル(約1万6000円)の罰金がほぼ確実に科せられます。この横に妊婦や乳母車を押した人のための駐車スペースがあることもあります。
 スーパーの中は、出入り口が平たんで通路が広く取ってあります。足腰が弱い人のための電動カー付きショッピングカートが置いてある所もあります。
 町中では働く障害者や学生の姿もよく見かけました。大学もバリアフリー化に努力しており、車いすの学生のための学内搬送サービスが徹底していました。設備が不十分である、あるいは前例がない、といって障害者の受け入れを阻む日本の学校のことを、つい考えてしまいました。
 アメリカ国内を旅行しても、観光地などは車いすの人が最優先され、モテルには必ず障害者用の部屋がありました。ニューヨークでは、バスにはすべてリフトが付いていました。
 何より印象深かったのは、至る所に障害者や女性、高齢者へのさりげない気配りや親切、譲り合いが存在することです。互いにドアを押さえたり席を譲ったり、赤ちゃんを抱いた人の荷物を持ってあげる場面をたくさん目にしました。親切にする人もそれを受ける人も、淡々として心理的な優劣はありません。個人主義の国ではあるけれども見て見ぬふりはしない、周囲への気遣いは失わない人がたくさんいる社会、と感じました。
 一口にアメリカと言っても、日本の25倍の面積と2倍の人口を持ち、人も地域も多種多様です。しかし1人当たりのGDP(国内総生産)は日本が上なのです。それでも障害者の差別を禁止する法律や福祉予算、障害者の雇用などを見ると、アメリカは日本を大きく引き離しています。厳しい競争社会にもかかわらず、心のバリアフリーは日本よりアメリカの方が進んでいるように思えました。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・岩井原育子、田中信行)

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