第79回:脊髄損傷者の排尿管理
復帰へ自己導尿習得を
交通事故や脊髄(せきずい)炎などで脊髄を損傷した場合、下半身まひのほかに排尿障害が出てきます。症状は尿意の消失や失禁、排尿困難、残尿や尿管への逆流などで、リハビリや自立した社会生活への復帰に大きな妨げとなります。また膀胱(ぼうこう)炎や腎盂(じんう)炎、結石、さらには腎機能障害など深刻な合併症の原因にもなります。
排尿障害の治療は、膀胱・尿道内圧検査や膀胱造影を用いた診断から始まります。膀胱が過剰に収縮している人には抑制剤や抗うつ剤を、場合によっては筋弛緩(しかん)剤も使います。逆に収縮不全や残尿のある人には膀胱の出口の筋肉を緩める薬や収縮薬を用います。
また排尿困難や残尿の程度の強い人は、膀胱に管(カテーテル)を入れて排尿をする必要があります(導尿といいます)。初めは医師や看護婦が1日5〜6回してくれますが、在宅に復帰すれば自分か家族でしなければなりません。
手順は、まずせっけんと流水で手をしっかりと洗い、指と尿道口を消毒綿でよく消毒し、カテーテルをゆっくり膀胱内へ挿入します。尿を出し終わったら静かに引き抜き、カテーテルは流水で洗います。カテーテルは消毒液を入れたケースに収納し、1週間くり返し使います。週1度はカテーテルとケース、消毒容器などをよく洗い、消毒液を新しく換えます。自己導尿は入院中に十分指導を受けてください。確実にできるようになることが感染防止、そして自立への一歩になります。自分でできないときに備えて、家族にも導尿できる人を確保すると安心です。
首の骨を損傷した場合は、自己導尿が困難になります。54歳、女性のAさんは交通事故で第五頚椎(けいつい)を損傷、指の機能を失い、座ることもできない状態となりました。しかし入院中に上半身を起こせる電動ベッドや鏡、そしてカテーテルを持つための手指装具などで工夫を重ねながら、根気よく自己導尿の練習を続けました。半年で自己導尿ができるようになり、今は感染症にかかることもなく、自宅で生活しています。
脊髄損傷者の排尿管理には、医師の治療と十分なリハビリを受けることが大事です。特に自己導尿は、今日の脊髄損傷者の社会復帰やスポーツへの挑戦を可能にしているといえます。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・三石久美子、田中信行)
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