第80回:人工股関節全置換術
高齢者ほど早期訓練を
変形性股(こ)関節症などによる股関節の破壊や大腿(たい)骨頚(けい)部骨折では、激しい痛みや足の短縮といった症状のため歩行が難しくなります。この場合、大腿骨の上部あるいはそれを受ける骨盤の一部を切り取って、ステンレスやセラミック製の人工股関節と置換する手術が有効ですが、この手術は骨だけでなく筋肉や関節包も切開します。そのため、スムーズな機能回復にはできるだけ早くリハビリを始めることが重要になってきます。
72歳、女性のAさんは重度の変形性股関節症で人工股関節全置換術を受けました。術後9日目から理学療法士とともに病室内のリハビリを開始。20日目からは訓練室に移って関節可動域訓練のほか水中訓練、平行棒内歩行に取り組み、手術後40日あまりで退院していきました。手術前の激しい痛みはなくなり、今では軽い1本つえだけで歩いています。
Aさんのように高齢になればなるほど、早くリハビリを始めないと関節が硬くなったり(関節拘縮)、足の筋力が著しく衰えたりします(廃用性障害)。
術後2、3日の安静はやむを得ませんが、その後は股関節を動かさないよう気をつけながら、ひざを強く伸ばす運動や足首の曲げ伸ばしを10回ずつ、1日3〜5回行います。7〜10日目にはベッドに座る練習や、良い方の足だけで車いすへ乗り移る練習をします。
遅くとも2週目には、リハビリ室で筋力訓練や関節運動を始めてください。抜糸が済んだらハバードタンクというひょうたん形のタンクの中で、浮力や水の抵抗を使った水中訓練も行います。水中歩行や平行棒、松葉づえを使う訓練をしながら、少しずつ体重をかけて歩く練習をします。
退院後も人工股関節を長持ちさせるため体重のコントロール、つえ、ベッド、洋式トイレの使用といった生活上の注意も必要です。股関節を深く曲げたり、足を内側に曲げる横座りや内また歩行は、関節に無理がかかり脱きゅうの危険があるので避けてください。
筋力トレーニングの継続も大切です。特にプール内歩行は関節に負担をかけずに筋力増強ができます。運動量は股関節が痛まず、あとで心地よい疲れを感じる程度を目安にすると良いでしょう。
(鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・山之内麻矢、田中信行)
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