第82回:車いすの選択

使い勝手と自立度重視

 骨折や手術で車いすに乗ったことのある人は多いでしょう。しかし脳障害や脊髄(せきずい)障害、重いリウマチなどでほとんど歩けない人にとって、車いすは単なる移動用具ではなく、体の一部になります。その使い勝手の善しあしで、自立度やQOL(生活の質)が決まるといって良いほどです。
 後ろから人に押してもらうタイプの車いすはほとんど規格品です。座位保持機能付きや、高い背もたれを倒してあおむけになれる型などがあります。
 一方、自分で操作する車いすは、二つに折り畳んで自動車などに積めるようになっています。車体は軽いアルミやチタン合金製が望まれます。既製品とオーダーメード品がありますが、「歩行困難」という身体障害の認定を受ければ、ほぼ無料でオーダーメード品が交付WEB master 註1)されます。
 最も一般的な自操式車いす(WEB master 註2)は、後輪に付いたハンドリム(握り輪)を手で回して動かすタイプです。両手で操作する脊髄損傷者用には両足を置く台がありますが、脳卒中片まひなどの人が使う片手式の車いすは足台も片方のみです(WEB master 註3)。足台や背もたれ、ひじあてを取り外せたり、別の部品と交換可能(モジュール式)にしたものもあります。握力の弱い人には、ハンドリムにゴムを巻いたり、手首や手のひらで押せる取っ手(ノブ)付きの型もあります。
 特注の費用は個人負担ですが、車いすは自分の「第二の足」と考え、ある程度お金をかけても使いやすいものにすべきでしょう。そのためにも車いす処方に熟知した専門医や業者とよく相談することが大切です。
 さらに特殊なものでは前輪駆動型やハンドルを回して動かすタイプ、レバー操作で座面を上下させて座席を床まで下ろせるものなどがあります。車いすマラソン用の車いすは完全な特注品で、世界トップレベルの選手になると42.195キロを1時間30分で走ります。電動式車いすはハンドル・ノブ操作だけで動かせるので、腕の力がほとんどない人にも便利ですが、重いのが欠点です。
 最近、米国で高度のコンピューター制御装置を搭載した四輪の車いすが発売されました。自由に段差や階段を昇降できる機能付きで、今後はさらに開発が進むものと期待されます。
 ( 鹿児島大学医学部附属病院霧島リハビリテーションセンター・ 二俣麻里子、田中信行)
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WEB master 註1:介護保険施行以後、車椅子はレンタルへと移行しつつあるように思われる。レンタルの車椅子というと、利用者本人の実状には全く合致しない粗悪品というイメージもあって、抵抗感を拭えないのだが、だからこそ、モジュールタイプなど、利用者の実状に適合したものを要求していく努力も必要だろうと思われる。また、レンタルだからこそ、気軽に差し替えを要求できると考えれば、それを最大限に活用することこそが在宅リハに関わる職種の使命でもあるかも知れない。
WEB master 註2:これは、自走式の誤植ではないかと WEB master は考える。よくあることなのだが、編集者が親切のあまり訂正してくださったのだろう(苦笑)。
WEB master 註3:フットレストについては、片麻痺用であっても、両側とも装備されていることが多いのではないかと思われる。ただ、かつては、スイングアウトの足台が認められなかったり、片麻痺だから足台は片方でいいでしょうとか、そういう無茶な話がまかり通っていた自治体も、あるにはあった。
(この項文責=WEB master,010124 記す)