第84回:おしゃれと化粧

意欲高め日常に積極性

 欧米では病気や障害を持った人、お年寄りもきれいにお化粧をし、男女を問わず明るい色の服を着て出歩いています。一方、日本では黒や茶色など地味な服装が多く、化粧する女性もぐんと少なくなります。
 リハビリテーションとは、単にリハビリ室で訓練をすることだけではありません。自立した日常生活に復帰し、家庭や社会ではつらつと生きることです。そのためには「自分はまだまだ若い、美しい」「病気なんかに負けないぞ」という意欲が大切です。化粧や若々しい服装、髪の手入れをすることはこの意欲を高めてくれます。明るく自立して生きている雰囲気があると、周囲にもそのように伝わります。障害を超えた人間関係を築きやすくなるように思います。
 高齢で障害を持った患者さんの例を紹介します。71歳、女性のKさんは脳卒中で左片まひになりました。入院当初着ていたのは、いわゆる老人向けの地味な服です。自分はこの世で一番不幸で、こんな姿をだれにも見られたくないと思っていたようです。
 私たち看護婦は、Kさんや他の患者さんに若く明るい服や化粧を勧めていきました。みんな、初めは「恥ずかしい」とか「年寄りだから」と消極的でした。しかし周囲から「きれいねえ、似合うよ」と声がかかるようになると、訓練への姿勢が積極的になりました。訓練以外の時間に部屋で寝ることも減り、仲間同士誘い合って屋外へ散歩に出るようになりました。病室の雰囲気も明るくなっていきました。
 Kさんは日常生活動作も少しずつ自立し、つえ歩行で退院されました。退院時、入院当初の服を見て「こんなに地味だったんですね。これからは明るい服を着て、お化粧もします」といわれました。今も元気にデイサービスに通っておられます。
 明るい服やお化粧は着ている本人の心を明るくします。それが他人とのつき合いや行動を積極的にし、ひいては治療や機能回復訓練への意欲も高めると考えられます。障害があろうと何歳になろうと、もっと自分らしさを表現し、おしゃれを楽しみましょう。そうした明るさは生きがいにつながり、きっとQOL(生活の質)を向上させます。
 ( 鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター看護部・土橋和子、三石久美子)
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