第85回:脳血管性痴ほう

進行具合で異なる対応

 痴ほうというとアルツハイマー型痴ほうが有名ですが、日本ではまだ脳血管性痴ほうが少なくありません。
 脳血管性痴ほうとは脳梗塞(こうそく)や脳出血、くも膜下出血によって起こる痴ほうのことです。片まひや嚥下(えんげ)障害、尿失禁をしばしば伴います。中でも多発性脳梗塞では痴ほう症状が出がちです。小梗塞を繰り返しながら階段状に進行するので、その再発防止は重要です。
 脳血管性痴ほうの中心症状は記憶障害と知能低下で、ほかに感情失禁や幻覚、夜間せん妄があります。また忘れてならないのが抑うつの症状です。意欲や自主性の低下が見られますが、脳賦活薬や抗うつ剤が効くこともあるので、見逃さないようにしたいものです。周囲からの声かけやレクリエーションで刺激を与える工夫も大切です。
 さてそのリハビリですが、痴ほうの進み具合によって対策は異なります。
 本人が「痴ほうでは?」という病識を持ち困惑している場合は、記憶障害があっても問題行動はほとんど現れていないレベルです。以前にも、トランプや文字カードを使って記憶力を伸ばす訓練、またメモ帳やテープレコーダーで記録する手段について述べました。本人のやる気を利用して、周囲からもいろいろ働きかけることが可能です。
 問題行動が多く本人より家族が困っているような場合は、もはやケア(世話、介護)が必要なレベルと考えた方がよいでしょう。寝たきりになりがちなので、介護する家族は本人のこれまでの人生に敬意を払いながらも、規則正しい生活を送るよう強く指導することが大切です。
 デイケア、デイサービスへの通所も一つの方法ですし、家族によっては散歩や庭いじり、食事と後片付け、テレビ、清掃、おやつなど、時間を決めてみんなで取り組む例もあります。痴ほうの人は何かするように命じてもうまくいきませんが、だれかと一緒なら頑張ってくれます。規則正しい生活は適度の緊張をもたらしてくれます。その中で問題行動をかなり減らした例は多く認められています。
 「薄情も情のうち」といいます。痴ほうが重くなるほど、本人の意志にかかわらず、家族の共通の願いに基づいた積極的なかじ取りが望まれるのではないでしょうか。
 ( 鹿児島大学医学部付属病院霧島リハビリテーションセンター・川津学、田中信行)
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