第87回:超高齢者の機能回復

状態に合わせ早期訓練

 鹿児島県には80歳以上の超高齢者が約8万人おり、その割合は全国でも上位にあります。80歳以上ともなると、加齢による影響も大きくなります。例えば脳卒中でも体のまひだけでなく体力低下や痴ほう、骨関節や心肺の合併症、また難聴や視力障害も大きな問題です。高齢者のリハビリではこれらによる訓練の困難さや合併症の治療、家庭での介護者の問題なども考慮しなければなりません。
 101歳の女性、Aさんは脳こうそくを起こして1カ月後に霧島リハビリセンターに入院してこられました。入院時、完全な左片まひと左半側空間無視(左側半分への注意の消失)がありました。心臓や肺機能も衰え、貧血や食欲減退のため体力はかなり低下して、尿失禁もありました。倒れる前から高血圧とひざ関節変形症の治療をしていましたが、1カ月の安静で軽い痴ほうもあり日常生活動作は全介助の状態でした。
 リハビリは、10分間したら10分間休憩、というように休息を十分に取りながら拘縮(関節が硬くなること)予防、健側の筋力強化、寝返りや起き上がり、座った姿勢を保つ訓練などを十分に行わせました。Aさんの家族にもベッドで寝ている時間を短くし、できるだけ車いすに座らせて庭に出たり話しかけたり、レクリエーションに参加させるように指導しました。
 次第にAさんの体力は回復して、生活リズムも安定してきました。訓練にも積極的になり、食事や寝返りも自力でできるようになりました。尿失禁はなくなり、トイレでのはいせつが可能となりました。在宅で介護したいという家族の強い希望があり、福祉サービスを利用しながらの自宅退院となりました。
 高齢者のリハビリの基本は、寝たきりによる機能低下の予防と加齢による合併症の管理にあります。高齢であるほど、できるだけ早期に訓練を始めてください。手足の曲げ伸ばし運動や介助歩行などの訓練は自宅でもできます。自力で立ち座りのできない人でも、車いすに座るだけで脳や体の刺激になります。
 ただ訓練のやり過ぎは逆に害にもなりますので、体力や全身状態に合わせて行う必要があります。栄養や水分をしっかり取り、デイケアや訪問看護、訪問リハビリなどの介護サービスも活用しましょう。寝たきりを防ぐとともに、介護する家族も疲れないよう、社会全体で高齢者の問題を考え支えていくことが大切です。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・又吉達、田中信行)
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