第89回:老健利用のコツ

できる生活動作増やす

 今回は介護保険の入所サービスの一つ介護老人保健施設(老健)について取り上げます。老健には必ず理学療法士(PT)か作業療法士(OT)がいます。いずれも維持リハビリと生活リハビリの指導をし、入所者の在宅復帰を手伝います。
 維持リハビリとは重い障害を持った人が身体能力を維持するためのもので、訓練には療法士の助けが必要です。では生活リハビリとは何でしょうか。日常生活を送る中で、周囲の介助を受けながら体力と気力を養い、家庭や社会の一員としての感覚を取り戻していく、それが生活リハビリです。もしあなたが療法士に「してもらうリハビリ」だけに頼っているのなら、それは間違いです。
 Bさんは脳こうそくで右半身不随になり、思うように言葉も話せなくなって入院しました。リハビリは計画通り進められましたが、本人は食欲も活気もなく訓練以外はほとんど寝たきりで、鼻から栄養チューブを入れた状態でした。ところが退院後、老健に入所すると食欲が出てきました。2カ月後には栄養チューブはいらなくなり1年後には寝たきりを脱皮。自分で車いすを使ってトイレへ移動、介助を受けながら用を足せるまでになりました。
 何が良かったのでしょうか。老健で特別な治療やリハビリをしたわけではありません。ただ病院より家庭的な生活環境で、同じように障害のある高齢者たちと食堂で食事をし、レクリエーションや季節行事を楽しむうちに、長時間座っていても疲れにくくなったようです。座れるようになったら、Bさんのはいせつ時間を職員がチェックし、定時に便座へ座らせる努力を粘り強く続けたのです。
 「できるはずの動作」を「できる動作」として獲得していくのが生活リハビリです。とはいえ身体に残された能力は一人ひとり違います。施設では入所者一人ひとりについて定期的な話し合いをしていますので、ぜひ家族と参加し、何ができるようになりたいのか、個別にどんなサービスを受けられるのか、療法士や介護職員、介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談してください。それが老健を使いこなすコツです。
 老健は本来、障害のために自立できなくなった高齢者が在宅復帰を目指すための場所です。特別養護老人ホームのような長期入所はできません。入所したら、家へ戻ることを前提にしたリハビリの目標を定めてください。それに向け、生活環境をいかに整えていくか話し合うことが大切です。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・山中弘子、田中信行)
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