第90回:性機能障害

新薬発売で身近な治療

 異性の存在はそれだけでも人生を楽しくしてくれます。2人が親密な関係を保ちたいと願っていても、性機能障害が生じれば大きな悩みをもたらします。だれにも相談できず独りで悩んだり、「もう年だから」「体が不自由だから」とあきらめてしまう人も少なくありません。
 このような性機能障害には泌尿器科などでの専門的な診断と治療が必要ですが、昨年発売の勃起障害治療薬によって、その一部は身近な医療機関でも基本的な治療ができるようになりました。この薬は血管拡張作用によって、性的刺激による勃起を増強します。国内での発売前に、ひそかに輸入された薬を服用した人の重大事故が報道されましたが、医師の指導に従えば安全で効果的な薬です。これまでの重大事故は医学的適応を無視し、狭心症や心筋梗塞で処方されるニトロ製剤と一緒に服用した場合に生じています。
 男性のMさん(52)は、十数年前の脳卒中が原因で右片まひになり、つえと下肢装具で歩いています。性生活は回復していましたが、2年前から勃起が十分でなくなり性交渉ができなくなりました。脳卒中による性機能障害はないこと、また服用中の薬にニトロ剤は含まれないことを確認した後、薬物療法を開始しました。治療によりMさんは勃起が持続して、性生活が可能となりました。
 この薬物療法は、せき髄損傷などの原因による勃起障害にも効果があります。薬が効かない場合は、手術やバキュームデバイスという機具で勃起させる方法もあります。長年の糖尿病と脳卒中による片まひがあり、薬物療法が無効だった70歳の男性、Kさんはバキュームデバイスによって性交渉が可能になり、奥さまにも喜ばれています。
 脳卒中患者に関する私たちの研究では、脳卒中を起こした人の約40%が、後に性機能の低下や消失を認めています(男女同様)。私たちは患者さんの無用な不安を除くため、
 (1)性生活の制限は不要
 (2)脳卒中が原因で性機能障害になることはまれ
 (3)性行為の身体への影響は問題ない
 (4)腹上死はなじみの薄い相手と飲酒が主因
 (5)女性の性交痛には潤滑剤や女性ホルモン補充療法が有効
−と説明しています。
 勃起障害に対する薬剤には医療保険が適用されないため、自己負担になりますが、お困りの方はまず身近な医療機関にご相談ください。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・川平和美)
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