第91回:ケアハウス

自立目指す「生活の場」

 病院や施設に入るほどではなくても、1人暮らしや老夫婦だけでの自立生活には少し不安がある、というお年寄りのためにつくられたのが「ケアハウス」です。
 これは、老人福祉法による軽費老人ホーム(A型、B型、ケアハウス)のひとつで、所得制限がなく、食事が付いています。住宅と施設の中間的な機能を持っており、1人暮らしや老人夫婦だけの世帯の自立した生活を支援します。一般に看護婦さんや寮母さんが数人いて、定期的な健康診断はありますが、日常生活にはなるべく手を貸さない、といういわゆる「見守り介護」が中心で、日課などの制約が最小限に抑えられた「生活の場」としての施設です。食事、入浴サービス付きの高齢者向けアパートともいえます。
 ここには、60歳以上の人で、食事、排せつ、洗面などの日常生活には支障がないが、自炊や掃除、買い物などの独立した生活をするには不安な人が入所できます。料金は食費、家賃、事務費など含め、所得に応じて月額7〜12万円くらいです。居室は個室が原則で、各室には洗面所やトイレ、調理機器があり、共有の食堂や談話・娯楽室、浴室、相談室などもあります。介護保険で入れるケアハウスもできていますが、重度の介護が必要な人は入れません。
 Sさん(66歳、女性)は1998年11月、交通事故で頭部外傷と左下肢の骨折を負いました。1本つえで歩行可能となりましたが、記憶障害や感情失禁があり、また時々大声を出したり、状況判断がうまくできないために、99年07月、霧島リハビリセンターに入院しました。これらの症状は、リハビリや薬の投与で徐々に改善しましたが、まだ自宅では面倒を見られないということで、09月に自宅近くのケアハウスに入所しました。最初のうちは、あまり周りになじめない様子でしたが、最近はデイサービスを週3回利用し、ホームヘルプや訪問看護婦による入浴介助を受けながら、趣味の洋裁を楽しみ、ある程度自立した生活を送っています。特異な行動もほとんど目立たなくなりました。
 欧米では、このようなケアハウスがとても発達していますが、日本では広さの問題や、看護婦さんがいないところがあるなど、まだ改善すべき点はあります。今後も、できるだけ残存能力を活用し自立した生活を営み、プライバシーを重んじるケアハウスの充実が望まれます。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・有馬美智子、田中信行)
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