第96回:身体障害者療護施設
「収容」でなく生活の場へ
身体障害者療護施設(以下、療護施設)をご存じでしょうか。常時介護を必要とす
るレベルの、家庭では十分に介護することが困難な人が入所する福祉施設です。1級か2級の身体障害者手帳を持つ、原則として65歳未満の人が対象で、現在県内に15カ所の施設があります。私たちのリハセンターを退院して、療護施設に入所している人もいます。
Nさんは22歳で交通事故により頸髄に損傷を受けました。急性期病院を経由してリハセンターに入院し、リハに打ち込みましたが、対まひ(両下肢のまひ)に加えて腕が肩まで上がらず、また手では完全に物をつかめない状態で退院しました。その後授産施設を紹介しましたが、先日3年ぶりに電子メールが届き、4月に開所したばかりの療護施設にいることがわかりました。
早速会いに行きましたが、日当たりの良い個室にパソコンを持ち込み、十分に使いこなしている様子です。また、政府がペナルティー付きで企業に向けて障害者雇用の促進を叫んでも、不況なのでなかなか就職先がないと言います。そして現在の楽しみは職員と共同作業で施設のホームページを作ることだと語ってくれました。
63歳のSさんは去年の夏、脳梗塞に見舞われ、右片まひと、全失語の状態になりました。リハセンターで急性期の治療とリハを頑張りましたが、まひは2級、失語は3級、合わせて1級の身体障害者手帳を取得するに至ました。介護保険の要介護認定では要介護度4でした。今後のことを奥さんと話し合いましたが、借家で家屋改造もできず、土地も預貯金もこれといってないので、1割の自己負担を伴う介護保険は利用せず、応能負担(所得に応じて負担する)の療護施設に入所するという方針になりました。現在Sさんは地元の施設にいて、毎日奥さんが食事の世話や軽い運動、車いすでの散歩に来ます。また週1回の施設としての維持的リハを行う時間もあり、それなりに充実した生活のようです。
身体障害を得て自宅に復帰することは、家屋改造や介護者の有無、介護者の健康状態などで時として多大な困難を伴います。施設が収容の場ではなく生活の場としての実質を整え、また機能維持に役立つ取り組みも視野内にあるならば、施設福祉はむしろ次善の策という以上に魅力あるものになりうると思います。前に紹介した老健施設、ケアハウス、そして今回の療護施設にはぜひ頑張ってほしいものです。
4月に開所した療護施設は、まだ半数の部屋が空いているそうです。市町村役場にお問い合わせください。
(鹿児島大学医学部附属病院霧島リハビリテーションセンター・川津学)
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