第97回:構音障害のリハビリ

あきらめず毎日訓練を

 私たちがスムーズに話しをするためには唇や舌、口の周りの筋肉、そして声帯がし っかり動き、呼吸も上手にできなければなりません。この、言葉を話すのに関係するところがうまく働かないために、言葉が話しにくくなるものを構音障害と言います。同時に、嚥(えん)下障害を伴うことも多く、それは嚥下と発声は同じような筋肉を使っているからです。脳卒中やパーキンソン病、舌の手術などの病気でも構音障害は認められます。
 構音障害は言語の理解や言葉を作ることが障害される「失語症」とは異なり、言葉を十分理解していても声を出すことがうまくできなくなったものです。従って、そのリハビリテーションは、うまく働かないところの訓練が主体になります。なるべく元のように舌や、のどの筋肉が動かせるように、それができないならその他の手段を使ってでも意思を伝えることができるようにすることが大切です。
 Aさんは74歳の男性で脳梗塞を2回起こしました。1回目は右の手足に軽いまひがありましたが日常生活は行えていました。2回目は左の手足に軽いまひが生じ、同時に言葉がしゃべりにくくなりました。唇が思うように動かず閉じにくくなり、舌も動きが遅く、相手に言葉が理解されないのです。飲み込みも下手になり、水を飲むとむせてしまいます。
 リハビリ目的で入院しましたが、運動の訓練と同時に言語の訓練も行いました。訓練はまず、座る姿勢をしっかり保ち、肩や身体の余計な力を抜きます。そして呼吸訓練、発声訓練、唇、舌、顔面の筋肉を動かす訓練を行います。具体的には鏡を見ながら口の形をつくったり、ほおを膨らませたりすぼめたり、また、舌を出したり引っ込めたり、左右の口角をなめたりもします。もちろん、歯磨きをしっかりし、口の中をきれいにします。発声訓練では、声のどこが不十分かを理解するためにテープレコーダーを使うことも勧められます。
 また、「あー」とできるだけ長く声を出す練習をし、次第にもっと長く声が出るようにします。Aさんはこれらの訓練でかなり声も大きくなり、話す言葉も周りの人が理解できるようになりました。しかし、元に戻ったわけではなく、退院後も毎日鏡を見て口や舌の訓練をしています。
 構音障害は嚥下とも関連がありますから、あきらめずに自宅でも毎日訓練を続けることが大切です。また、詳しい訓練法については各人の症状によって違いもあるので、専門の言語療法士に指導してもらうとよいでしょう。
 (鹿児島大学医学部リハビリテーション科・緒方敦子、田中信行)
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