第99回:温泉浴

温熱、水、塩類の三重効果

 日本は世界でも有数の泉源数と湧出量をもつ、温泉大国です。
 温泉は温水による温熱効果や浮力効果、水の抵抗、静水圧に加えて、含有成分の(塩類やガス)効果や温泉環境の効果がプラスされます。このため古くから、脳卒中やリウマチなどのリハビリテーションはもちろん、高血圧や糖尿病、腰痛等の慢性病の療養にも愛用されてきました。
 温熱効果は、熱が血管を広げて全身の血流を改善し、関節や筋肉のコラーゲン線維を柔らかくするため、冷え症、腰痛、肩こり、関節痛に非常に有用です。また血圧も下がり、心臓の負担も軽くなります。この結果、全身の酸素化と老廃物の排出も高めてくれ、汚い静脈血も真っ赤になります。
 浮力や水の抵抗は、脳卒中や神経障害によるまひ、あるいは骨、関節の痛みで歩けない人の「水中訓練」として、また静水圧はぜんそくのリハビリにも有効です。
 温泉に含まれる種々の塩類は皮膚表面の蛋白と結合して薄い膜を作ります。これが温泉は湯冷めしない理由です。つまり温熱効果を長持ちさせ、安眠を誘い、夜の頻尿も少なくしてくれます。硫黄泉が難治の乾癬に効くほか、草津の強い酸性泉は殺菌効果によりアトピー皮膚炎に良いという報告もあります。また山奥や海辺の温泉は美しい空気、水、緑、オゾンという、最良の療養環境であり、「脱ストレス」効果も大きいのです。
 この自然の与えてくれる温泉を、温泉の少ない欧米では非常に大切にし、医療保険が適用されている国もあります。本県の串良町では当センターとの協力で、無料温泉券の発行や温泉・入浴の講演会を開催し、年間の医療費が減少しました。今後の高齢化社会、ストレス社会では医療も薬や手術だけでなく、温泉や入浴の療養、リハビリ効果を大切にしてほしいものです。
 この有用な温泉や入浴も「過ぎたるは及ばざるが如し」です。(1)温度は41度以下(ぬるめにゆっくり)(2)一回の正味入浴時間は10分とし、回数は一日2回まで(3)飲酒後や食直後、深夜の一人入浴はさける(4)心肺機能の悪い人は浅めの入浴を守ってください。
 (鹿児島大学医学部霧島リハビリテーションセンター・堀切豊、田中信行)
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