第102回:グループホーム

共同生活で痴ほうをケア

 高齢化に伴って痴ほう性老人が急増し、厚生労働省の統計では現在の140万人が 2025年には270万人に達すると予想されています。痴ほう性老人対策は、21世紀の医療の最大の課題の一つです。
 その対応策の一つとして、2000年4月に始まった介護保険で正式に制度化されたのがグループホームです。グループホームはわが国では、歴史的に知的障害者や精神障害者を対象として発展してきました。
 介護保険下でのグループホームは初期から中等度の痴ほう症のお年寄りが対象で、5〜9人程度のお年寄りが2〜3人の介護スタッフとともに共同生活をします。自宅でもなく、施設や病院でもない家庭的な「第二の住まい」です。それは痴ほう症のお年寄りの単なるお世話ではなく、介護スタッフの助力も受けながら家事や趣味も楽しむという、「生活リハビリ」中心の自立支援的なケアを行います。各人個室食事付きで月10〜15万円ほどです。
 Sさん(86)は2年前より物忘れなどの痴ほう症状が出現し、アルツハイマー型老年期痴ほうと診断されました。火の取り扱いにも不安があり、家族の希望もあって老人保健施設入所となりましたが、物取られ妄想や徘徊があり、周囲とのトラブルが絶えませんでした。
 そこで家族と話し合って、同じ市内のグループホームに入所しました。最初は周囲になじめなかったそうですが、1年ぶりに会ったSさんは妄想や徘徊も消えて、穏やかになっていました。もちろん、特別な治療やリハビリをしたわけではありません。ただ、病院や老健よりも普通の住居に近い家庭的な生活環境で暮らし、徘徊にも散歩としてスタッフが付き添ったり、一緒に食事や配ぜんの手伝いをしてもらうといった対応をしているうちに、本来の穏やかなSさんに戻られたようです。
 痴ほう症のお年寄りは新しい環境や見知らぬ人に適応しにくく、それが不安や妄想につながります。グループホームでは、小人数の顔なじみのスタッフや入居者とともに生活し、心も安定していきます。痴ほう症を治すことはできませんが、ゆったりとした時間の流れの中で入居者のペースに合わせて生活し、残された能力をうまく引き出すことで穏やかに暮らせるのです。
 しかし、介護報酬の低さや建設補助金の問題があり、全国的にグループホームは計画通りに増えていないのが現状です。たとえ痴ほう症があってもその人らしく尊厳を持って暮らしていける制度として、よりグループホームが社会的に整備されていくことが望まれます。詳細は市町村の老人福祉担当課に問い合わせてください。
 (鹿児島大学リハビリテーション科・久松憲明、田中信行)
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