第105回:急性期からの機能訓練
寝たきり防止に早期から
リハビリは、かなり病気が治ってから訓練室で行うものと考えられていますが、そ
れは全くの誤りです。特にまひのある脳卒中や脳外傷、またお年寄りの病気や手術後は、発症直後からリハビリを始めないと床ずれや肺炎、手足の拘縮、筋委縮などの「廃用症候群」から寝たきりになるおそれがあります。わが国では、この早期リハビリの遅れによる寝たきりが最も問題です。
まず発症(あるいは手術)直後から、沈下性肺炎、床ずれの予防のために、ベッドの上で「体位変換」を行います。これは意識がなくても2〜3時間おきに身体の向き、圧迫部位を変えてやるもので、皮膚の血流低下や痰(たん)がたまるのを防ぐため最も重要なことです。マットは体が沈み込まない程度の固めのものを用います。
また、脳卒中などでは、まひのある手足が悪い形で固まらないように「良肢位の保持」をします。一般に上肢は曲がった状態、下肢は伸びた状態になりやすいため、上肢は伸ばし、下肢は軽く曲げておきます。特に手指は、握り込みを防ぐために筒状に巻いたタオルを軽く握らせ、手足は砂袋やプラスチックシーネを使って固定します。
次に、関節を動かさないと起こる拘縮や深部静脈血栓の予防として「関節可動域訓練」が重要です。一度固まった関節をもとに戻すのは難しく、それが運動時の痛みや、立つ、歩くなどの日常生活動作(ADL)障害の大きな原因になります。特に下肢を動かさないと深部静脈血栓ができやすく、はがれた血栓が肺梗塞を起こす危険性があります。手足の屈伸で血液が流動することが、血栓ができるのを防ぎます。
関節可動域訓練は、痛みを起こさない範囲でゆっくりと、少なくとも朝夕2回、各関節10回くらい曲げ伸ばしします。足首、手指、肩、膝(ひざ)の関節は特に念入りに行います。脳卒中でも、両手を組んで動く方の手で、障害がある方の上肢の上げ下げや、ひじ、手首の屈伸などは、一人でもすることができます。
そして、よほど状況が悪くなければ、2、3日目には30〜60度へとベッドを起こし、3、4日目には支えてベッドに座らせます。ここまでのリハビリは家族の人でも、看護婦さんや理学療法士に少しコツや注意点を教えてもらえれば繰り返し行えます。4〜6日目には、車いすに乗せ、訓練室で歩くための本格的なリハビリに入ります。
急性期のベッドサイドのリハビリは、本格的なリハビリにスムーズにつなげるためにとても重要です。まれな病気の再発や悪化を、過剰に恐れてはなりません。「無意味な安静は寝たきりのもと」と考えて、発症早期からのリハビリに心がけましょう。
(鹿児島大学医学部附属病院霧島リハビリテーションセンター・木村宏市、田中信行)
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