第108回:尿失禁
原因つかみ適切な対応を
尿失禁は成人にもしばしばみられる症状です。恥ずかしがって治療しなかったり、
おむつや膀胱カテーテルを入れっぱなしの人も多いようですが、その原因に応じた対応で非常によくなります。
最も多い腹圧性尿失禁は、一般の女性、特に出産歴の多い中高年の女性にしばしばみられるもので、尿道を支える骨盤底筋が弱くなるために、運動、せき、くしゃみなどで腹圧が加わったときに尿がもれるものです。
切迫尿失禁は、膀胱の知覚や収縮が過敏になるもので、少し尿がたまっただけで尿意が出現し、我慢できずに失禁するものです。脳卒中や脊髄疾患、前立腺肥大症などが原因となり、尿回数も多くなります。
溢流性尿失禁は、膀胱の収縮力の低下や尿道の通過障害のために膀胱に尿がいっぱいたまり、それが少しずつあふれ出るもので、残尿も増え、感染も多くなります。これも脳卒中、脊髄疾患、前立腺肥大症や糖尿病、薬剤などが原因となります。また排尿機能には異常がないのに、歩行障害や痴ほうのためトイレに間に合わなかったり、場所が分からずに失禁するものを機能性尿失禁といいます。
尿失禁には以上のような原因が複雑にかかわっており、正確な診断には泌尿器科での検査が大切です。24時間の排尿日記(排尿の時間、排尿量、失禁や尿意の有無など)も、尿失禁の原因の診断やその後の治療やケアに役立ちます。
治療としては、腹圧性尿失禁には骨盤底筋を強化する体操や尿道を収縮させる薬の服用、あるいは簡単な尿道のつり上げ手術を行います。切迫性尿失禁には、膀胱の収縮を抑える抗コリン薬が非常に有効です。膀胱の収縮が悪い溢流性尿失禁では、尿道をゆるめるα遮断薬と膀胱収縮を強める薬を併用します。α遮断薬は前立腺肥大症にも有効です。
また残尿が多い、あるいは自力での排尿がない場合は、5〜6時間ごとに尿道から管を入れて尿をとる間欠導尿が大切で、脊髄損傷などでは自力でそれを行います。機能性尿失禁には、トイレの改造やポータブルトイレや尿器の利用、時間おきの排尿誘導などで対応します。
尿失禁は、本人の不快感や不潔というだけでなく、しゅう恥心や気兼ねなど精神的な苦痛も伴います。安易なおむつの使用や膀胱への留置カテーテルは、床ずれや尿路感染の原因になるとともに、本人の自尊心を傷つけ、排尿への無関心から痴ほうや寝たきりにもつながっています。尿失禁は、本人も家族も恥ずかしがらずに、専門医に相談して、治療につとめることが大切です。
(鹿児島大学医学部リハビリテーション科・吉田輝、田中信行)
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