第109回:体幹装具
姿勢保ちバランス改善
装具というと一般に手足につけるものを想像しますが、体幹、すなわち背骨から
腰、腹部も体重を支え、運動バランスにも非常に重要です。この体幹の機能が脊椎(背骨)や神経、筋肉の病気で障害されたときに用いられるのが「体幹装具」です。
最もよく用いられるのが、脊椎の圧迫骨折や椎間板ヘルニア、あるいは脊髄や脊椎疾患の術後に用いられる体幹装具です。この場合、脊椎の骨の動きやずれを十分に固定するため、キャンバス生地やときにはプラスチックなどの硬い素材にアルミニウムなどの支柱を付けたものを用います。
骨や椎間板に異常のないいわゆる筋筋膜性の腰痛症の場合は、腰椎バンドと呼ばれる弾力性のある生地を用い、それ自身の固定力とそれを巻いて腹圧を高めることで体幹や骨盤の固定性を良くします。
この腰椎バンドは小脳失調症による体幹の揺れに対しても効果があります。それは単に体幹を固定するというよりも、腰背部の筋肉を締めることで筋肉の緊張を感じる「筋紡錘」の働きが敏感になり、体や手足の揺れのコントロールが良くなるのです。
Aさん(18)は、交通事故で脳挫傷を起こし、当センターへ入院されました。まひは軽度でしたが、脳幹部損傷による小脳失調症のために、手足だけでなく、体幹も動くたびに大きく動揺します。そのために歩行のバランスも悪く、動作時の手足の揺れもさらに大きくなって正確な動作ができません。
そこで、手足や体幹の筋力トレーニングと並行して、腰椎バンドをしっかり装着させました。これで歩行や姿勢保持が安定し、さらに訓練を続けて、小走りも可能になって退院されました。
しかしこれらの装具も一日中着けっぱなしでいると体重の支持をそれに頼り、また運動量自体も少なくなるため、腹筋や背筋の筋力が低下したり、体幹の関節の動きが悪くなります。そのため一日に何時間かは装具を外して、腹筋・背筋の筋力増強や、痛みのない範囲で体幹の軽い屈伸や回旋運動をします。
全体重負荷が難しければつえや歩行器、平行棒での歩行や立ち上がりの練習、寝たままでの手足の屈伸や足上げ、おしりの押し上げや押し下げ、体のひねりなどを行います。
簡単な腰椎バンドは薬局などでも2000〜5000円で市販されています。しかし腰痛といっても単純ではなく、脊椎や脊髄、神経の病気からのものも多いのです。それぞれの専門医で正しい診断を受け、よく合った装具を作り、装着の時間や外したときの運動法などについてもよく聞いて行いましょう。
(鹿児島大学医学部附属病院霧島リハビリテーションセンター・弓場裕之、田中信行)
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