人間は生命にかかわるような病気や重い 後遺障害を受けると、単に体のことだけで なく、心理的にも大きな問題が起こります。
キューポラ・ロスは「不治の病」等の宣告を受けた時の心の変化を、(1)ショック期 茫然自失の時期(2)否認期 病気自体を否定(3)怒りの時期 病気や周囲にあたる(4)抑うつ期 もう駄目だと落ち込む(4)理解の時期 病 気や障害を深く知る努力(6)受容期 病気(死)や重い障害を受け入れ、より良い生(死)に向け努力する時期−の6つに分けています。
脳卒中や交通事故などによる脳損傷や脊髄(せきずい)損傷、手足の切断などの重い障害を受けた時にも同様の心の変化をたどるといわれ、出来るだけスムーズに「障害の受容」に至るようにすることもリハビリの大きな目標です。
医師や看護婦、家族を最も悩ますのは「怒りの時期」の「もうどうなっても良い」とか「どうせがんばっても同じこと」などの言葉ですが、それは支援を求め、良くなりたいと言う希望の裏返しでもあります。
また、「抑うつの時期」も希望を見いだせずに悩んでいるのであり、ただ「頑張れ、頑張れ」と励ますばかりではなく、リハビリの仲間や既に社会復帰した人の具体的な話や、リハビリ専門家の的を射た助言、訓練による機能の向上が効果的です。また抑うつの背後には将来や失職への不安もあり、適切な抗うつ薬・精神安定剤の使用も有効です。
若い人の場合、職場復帰や経済的支援も気になるところで、医師やケースワーカーが会社の人事課と話し合ったり、家族や周囲が支えることも非常に大切です。
障害の受容とは患者一人の問題ではありません。家族や社会が患者の心の動きを理解し、価値ある人間として受け入れる具体的な行動がなければ患者自身の受容も進みません。例えば患者を家庭に迎えるための車椅子や電動ベッドの準備、トイレやふろの改造などの環境の整備は、最も患者を勇気づけるものです。
また、会社や公共の場所のバリアフリー化が、「社会もあなたを必要としている」という明確なメッセージになります。障害があったとしてもその人であることに何の変わりもありません。「障害をもった人」をありのままに周囲が受け止めること、それが患者自身の障害の受容に結びつくのです。
(鹿児島大学医学部リハビリテーション科・奥百合恵、田中信行)