脳卒中や脳外傷あるいは神経疾患で、下肢のまひや痙(けい)性(筋のこわばり)による歩行障害が出ることがあります。下肢全体というよりも膝(ひざ)から下の足関節や足底、足の指の障害が最も多く、それを矯正したり、支持するのが「短下肢装具」です。
痙性による足首のつっぱり(尖足)や足底の内側へのねじれ(内反)、足の指の屈曲(槌趾・ついし)などを矯正したり、足首の垂れ下がり(下垂足)を支えることで歩行を助けます。短下肢装具の種類は、下肢の痙性やねじれ、変形の程度により、強い矯正や支持力のある靴型装具と、矯正力はやや弱いものの軽量のプラスチック装具の二つがあります。靴型装具は金属支柱と足関節の屈曲を調整する器具(クレンザック継手)も付いています。現在最もよく用いられるプラスチック装具には金属支柱付きや後方・前方支柱型、また足関節可動型と固定型があります。通常、靴の中にはきこんで使うため熱可塑性プラスチックを使って、各人の足底や指の形に合わせて作ります。足にきちんと合わないと、矯正力が不十分だったり、痛みの原因になるので、しっかりした装具士に作ってもらうべきです。
Aさん(56)は1年ほど前に脳卒中で倒れ、右片まひを起こしました。数カ月のリハビリを経て、短下肢装具とT字つえで歩けるようになり退院しましたが「どうも歩くときに膝が突っ張り、足の指が曲がり込んで痛い」と言って、当センターを訪れました。
痙性の強い典型的な内反尖足と槌趾がありました。短下肢装具は足関節なしで、プラスチックの材質も薄く、幅も狭いため、ほとんどAさんの内反尖足の矯正に役立っていないことがわかりました。歩くときに地面に足底をつけようとして膝を過度に伸ばすため、スムーズな歩行ができないうえ、装具の先も短く、槌趾をさらに悪化させていました。これよりずっと厚めのプラスチックで、足関節付き、足指先端までの短下肢装具を作ったところ、歩き方や痛みがすっかり改善し、歩くスピードも2倍以上になりました。
脳卒中などの患者さんの中には、何となく装具を嫌がる人もいますが、大きな誤りです。大きな体を2本の足で支え、バランスをとって歩くのは大変なことです。自分にぴったり合った装具とつえできちんと歩けることが重要になります。
( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・ 林菊若、田中信行)