第114回:手足の痙性

腱の切離やブロックが有効

 

 脳卒中や脊髄損傷をはじめ、さまざまな中枢神経の障害に伴う後遺症の一つに痙(けい)性があります。何かをしようとすると必要以上に筋肉が収縮し、本来の動きの邪魔となる性質のことです。脳卒中の直後は、まひした手足の筋肉は完全に緩みきった状態ですが、時間とともにまひしたひじや手首、指は曲げる方の筋肉の痙性が高まってきます。一方、下肢では伸ばす方の筋肉の痙性が高まり、膝や足首がつっぱり、足底は内側にねじれ、足指が曲がり込んできます。それを放っておくと、そのままの形で筋肉や腱(けん)は硬くなり、関節の動きが困難な状態(拘縮)になります。

 そのために着替えのときにそでも通しにくく、手のひらや指の内側はいつも汗ばんで不衛生になりやすく、また、足のねじれと指先の屈曲のために歩きにくくなります。早いうちから手や指は伸ばし、足は曲げる訓練をすることが、その予防になります。

 痙性の治療としては、第一に曲がり込んでくる関節の動きを装具で矯正するもので、特にひざから下の短下肢装具がよく処方されます。第二は筋肉の緊張をほぐす筋弛緩(しかん)薬の内服です。第三の方法は体表面から専用の針と電気刺激で痙性の原因となっている神経を探り出し、そこに局所麻酔薬やフェノールなどを注入して神経をブロックするものです。これらを組み合わせて治療しても不十分な場合は、手術による短縮した腱の延

長や切離を検討します。

 5年前に脳出血を起こしたCさん(48)は、十分なリハビリによって職場復帰も果たし、プラスチック装具とつえで歩けるようになりました。しかし、まひした足の痙性が徐々に強まり、装具の中でかかとや土踏まずが大きく浮いて歩きにくくなってきました。筋弛緩剤の内服で幾分よくなり、さらに神経ブロックを加えてかかとや土踏まずは浮き上がらなくなりました。しかし、歩行時に足指がぎゅっと曲がり込む動きはなかなか改善せず、指先が痛くてたまりません。これは足の指を屈曲する長指屈筋や長母指屈筋の痙性によるものです。

 そこで、これらの筋肉の腱を切離する簡単な手術をしたところ、指先の曲がり込みは大きく改善し、痛みが出ることもなりました。

 退院してからも関節を十分に曲げ伸ばしする訓練が最も大切ですが、それでも手足の痙性が強まってくる場合があります。そのときは早めにリハビリ専門医や整形外科医に相談し、適切な対策を講じることが大切です。

( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・ 飯山準一、田中信行)

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