近年の高齢化と糖尿病や高脂血症等の生活習慣病の増加により、心臓、血管系やその他の器官にいくつもの障害(重複障害)を持つ患者さんが多くなりました。そのため、例えば脳卒中のリハビリテーションといっても、注意深い観察や対応を求められるようになっています。
62歳のAさん(男性)は1日60本のヘビースモーカーで、55歳と60歳で、2回の心筋梗塞(こうそく)を起こしました。1カ月前、突然左半身のまひを起こし、右脳の大きな脳梗塞と診断されました。不整脈(心房細動)もあり、おそらく左心房、あるいは心筋梗塞になった部分にできた血栓がはがれて、脳の血管につまった(脳塞栓)ものと思われます。
やっと立てるようになり、歩行訓練を始めましたが、すぐにゼーゼー息切れがして訓練が続けられず、胸痛も生じてきます。心筋梗塞による心不全と狭心症さらに長い喫煙歴による肺気腫の合併と診断し、利尿剤や強心剤、亜硝酸剤(ニトロール)を投与してやっとリハビリを行えるようになりました。
それでも息切れが強いときは、心電図や指先での動脈血酸素飽和度をモニターし、酸素吸入をしながら訓練を続け、トイレに歩いていけるまでに回復しました。もちろん、完全に禁煙させ、再発防止のための抗凝固剤(ワルファリンやアスピリン)の投与も欠かせません。
脳卒中一つだけでも大変なのに、心不全や狭心症、不整脈、肺気腫などが合併するとリハビリも非常に大変で、細心の注意が必要となります。中には大動脈瘤(りゅう)を合併していたり、糖尿病などがあると下肢の動脈も詰まって、脳卒中と片足切断の合併というようなケースもあります。
すなわち、糖尿病や高脂血症、あるいは喫煙、高血圧、肥満などの「危険因子」が重なると、脳も心臓も手足の血管も、動脈硬化を早くから起こしやすくなります。このような「重複障害」を持つ人が最近非常に増えているのです。
これらの多臓器の障害のチェックと、運動ができるかどうかへの配慮、そして危険因子のコントロールによる再発防止とともに、リハビリもより細かな注意が必要になっています。
( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・堀切豊、田中信行)