第118回:脊柱管狭窄症

腰痛体操などで筋力増強

 

 私たちの脊椎(せきつい、背骨)は指輪のような形の椎骨(ついこつ)が重なってできています。腹側の指輪の台に相当する部分にはクッションとなる椎間板(ついかんばん)があり、背中側の指穴に相当する部分が連なってできるトンネルのような管(脊柱管)の中を脊髄(せきずい)が通っています。さらにその脊髄からは多数の末しょう神経が椎骨と椎骨の間を通って出ています。

 この脊髄の通り道である脊柱管が何らかの原因で狭くなるのが「脊柱管狭窄(きょうさく)症」であり、腰椎部に最も多く見られます。原因として多いのは、腰椎の変形(変形性腰椎症)ですが、腰椎と腰椎の間のクッション役の椎間板の脊柱管への飛び出し(椎間板ヘルニア)や骨のずれ(すべり症)などでも起こります。

 主な症状としては、骨と骨の間から出てくる神経が圧迫されるために下肢の疼痛(とうつう)、脱力、知覚障害があり、特徴的な症状としては、少し歩くと下肢の痛みで歩けなくなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」があります。

 Kさん(62歳、女性)は、農作業中に急に腰が痛くなり、近くの病院でぎっくり腰と診断されました。湿布をして安静にしていたところ、痛みは和らぎましたが、再び腰痛がひどくなり、右下肢のじんじん感やひきずり歩行、200メートルほど歩くと右下肢の痛みで歩けなくなる「間欠性跛行」などの症状が現れました。

 整形外科を受診したところ、レントゲンと磁気共鳴診断装置(MRI)の写真から変形性腰椎症と椎間板ヘルニアによる腰部脊柱管狭窄症と診断され、当センターに入院しました。腰椎部の低周波刺激、骨盤けん引、腰痛体操を始め、下肢の筋力低下に対しては、筋力増強訓練や温水プールでの運動訓練も行いました。また、右下肢の間欠性跛行に対しては、神経の血流をよくする薬剤の注射をしながら歩行訓練を行いました。約1カ月半の入院で、腰痛、じんじん感は改善し、筋力もついて引きずり歩行もみられなくなりました。歩行距離は当初の200メートルから1000メートルに延び、退院後はコルセットを装着して農作業もできるようになりました。

 腰部脊柱管狭窄症は、高齢化社会にともなって急増し、最近注目されています。持続的な痛みや膀胱(ぼうこう)直腸障害を認める重症例では手術が必要な場合もありますが、一般的にはKさんのようにリハビリや内科的治療が有効な場合も多く、正しい診断と対策が重要です。

( 鹿児島大学医学部リハビリテーション科・上下智之、田中信行)

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